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成功する要素があるにもかかわらず、初動で失敗しやすい理由
ここ数週間の間に、同じような話を10回は耳にした。ある企業(XYZ社)が、AIを活用する新たな社内ワークフローの取り組みをスタートさせた。「AIファーストの業務運営」への決定的な一歩とされていたが、その試みは失敗に終わった。何が起きたのか。
開始からほどなくして、利用データから状況が浮かび上がった。最前線のチームのうち、新システムを継続的に使用しているのは一部に限られていた。一方、時折利用することはあっても、プレッシャーがかかったり問題が生じたりすると、従来の仕事の進め方に戻ってしまうチームもあった。そして、残りのチームは変化そのものを回避し、表計算ソフトやメールなど慣れ親しんだ代替手段に頼り続けていた。
このエピソードで興味深いのは、新システムの導入に公然と反対する人は皆無だったという点だ。断固反対という人物は一人もいない。にもかかわらず、従業員は変化の波に乗ろうとしなかった。なぜか。
AIに懐疑的だったからだろうか。いや、背景にはもっと根本的な問題があった。組織が変革に全面的に関与していなかったのである。
新たな取り組みには、成功するはずの要因が揃っていたかもしれないが、実際には初動でつまずいてしまった。筆者は組織変革のさまざまな実例を見てきたが、初期段階の失敗として最も一般的なのが、この「初動のつまずき」である。組織変革の現場に、途中で頓挫した試みの残骸が多数残されているのも、そのためだ。
「初動のつまずき」はなぜ起きるのか
組織変革を連続する2種類のレースだと考えよう。第1レースの「導入」は勢いを生み出す段階で、第2レースの「完遂」はその取り組みを定着させる段階である。
大半の失敗は第1レースのスタートエリアを抜け出していない段階で生じており、第2レースで起きる失敗はほとんどない。
つまり、「初動のつまずき」とは導入部での失敗なのだ。リーダーが変革イニシアティブを立ち上げても、必要な支援や連携、切迫感、勢いを生み出す初期段階の成功を実現できず、組織の関与が部分的なものに留まってしまう。従業員からは「今月の注目施策」程度に受け止められ、従来のルーチンが変わることもない。そして、取り組みは軌道に乗るどころか、停滞し、勢いを失い、やがて失敗する。
初動のつまずきは頻繁に起きており、その事実から、つまずきの根本原因の多くが本来は予防可能であることが窺える。
筆者は初動のつまずきを経験した変革チームに関する数百件の事後分析を通して、失敗にいくつかの明確な共通パターンが存在することを発見した。本稿では、初動のつまずきを引き起こしやすい、相互に絡み合った6つの要因を紹介しよう。
1. 道義的権威の欠如
初動段階の導入がうまくいかない原因として、道義的権威の欠如がある。信頼され、価値観に根差したリーダーシップが欠けているため、指示に従う状態から自分の信念で動く状態への転換を起こすことができない。従業員がリーダーを信頼していなければ、現状を壊して新たな一歩を踏み出そうとはしない。







