AI時代に欠かせない「エージェントマネジャー」の役割
Yaroslav Danylchenko/Stocksy
サマリー:AIエージェントの自律性が高まる中、企業には「人間とAI」の混合チームを統括する「エージェントマネジャー」という新たな役割が不可欠となっている。彼らはAIの教育、ガバナンス、人間へのエスカレーションを担い、戦略的意図を実行へと繋ぐ架け橋となる。本稿では、セールスフォースの事例を通じて、この新職種の定義や必要なスキル、そしてAI時代のリーダーシップがいかにあるべきかについて詳細に紹介する。

「人間+テクノロジー」のチームを率いるエージェントマネジャー

 ザック・スタウバーの一日は、最初のカスタマーサポートチケットがキュー(処理待ちリスト)に届く前から始まる。世界的なCRM(顧客関係管理)プラットフォームを提供するセールスフォースのサポートエージェントマネジャーであるスタウバーは、「エージェントフォース」と呼ばれるプラットフォーム上で、サポート、営業、マーケティングにわたる生成AIエージェントを管理している。スタウバーは自身のルーチンをこう表現する。「データ、データ、データだ。ダッシュボード、スコアカード、エージェントの可観測性モニタリングで一日が始まり、終わる」

 彼はAIエージェントがどのように機能しているかだけでなく、どのように学習し、適応しているかを注視している。それは、従来のマネジャーが現場を歩き回り、苦戦している従業員に声をかけたり、困難な案件でチームと打ち合わせをしたりする姿に近い。

 セールスフォースの事例は、あらゆる業界におけるデジタルワークの未来の姿を垣間見せてくれるものだ。同社がみずから活用し、顧客企業にも販売しているエージェントフォースのプラットフォームは現在、同社に寄せられるカスタマーサポート案件の約74%を自律的に解決している。すべてAIエージェントである数十人の「デジタル従業員」が、顧客の問題を解決し、パーソナライズされたメールのドラフトを作成し、より複雑な案件を人間の専門家に振り分けている。各AIエージェントは半自律的に動作し、フィードバックから学び、他のAIエージェントと協働し、手に負えない複雑なタスクは人間のサポートエージェントにエスカレーションするという、ハイブリッドなワークフォースを形成している。

 このハイブリッド型ワークフォースを監督するのが、スタウバーのようなエージェントマネジャーだ。彼は、AIを活用した「人間+テクノロジー」のチームを率いている。エージェントマネジャーは、AIエージェントがいかに学び、協働し、成果を出し、人間の同僚と協力するかをオーケストレーション(統合、編成)する責任を持つ、新しいタイプのリーダーだ。彼らは、従来のマネジャーが人間の従業員をコーチングし、動機づけるのと同じような方法でAIエージェントを監督するが、エージェントの業務の安全性、正確性、およびビジネス目標との整合性により多くの時間を割く。

 セールスフォース、JPモルガン・チェース、ウォルマートといった企業が、カスタマーサービスから財務に至る各部門で自律型AIを実用化するにつれ、マネジメントのあり方に抜本的な変化が起きている。今日導入されているエージェントは、単にタスクを自動化するためのツールではない。トレーニング、ガバナンス、パフォーマンス管理を必要とするチームメートなのだ。この転換の中で、エージェントマネジャーはAI時代における最も重要な役割の一つとして浮上している。

 ソフトウェア革命の際にプロダクトマネジャーが不可欠な存在となったように、エージェントマネジャーは、戦略的意図と自律的な実行を結びつける役割を担いつつある。彼らの使命は、エージェント間、および人間との連携をオーケストレーションすることで、AIエージェントをより賢く、速く、安全に、そしてよりインパクトのあるものにすることだ。

営業開発におけるハイブリッド型ワークフォース

 この変化を端的に示す例が、セールスフォースの営業開発担当(SDR)だ。以前は同社のエージェンティック・トランスフォーメーション・アンド・セールスデベロップメントチームが、リード(見込み客)のフォローアップを担当し、通常、数十件のコンタクトを処理していたが、一日に実際に話ができるのは12~15人に留まっていた。人間の能力の限界により、貴重な見込み客に十分な対応ができていなかったのだ。

 現在では、AIエージェントがハイブリッドチームの一員として機能している。SDRのAIエージェントは、パーソナライズされたアプローチ、適格性の確認、未対応の見込み客への継続的なフォローアップといった、大規模だが重要度の低い初期段階のやり取りを引き受ける。SDRエージェントがいることで、セールスサイクルが止まることはない。同チームのバイスプレジデントであるヴァネッサ・タバートは「チームが眠っている間も、エージェントは顧客と対話をしている」と語る。

 エージェントを組み込んだことで、チームの能力は劇的に変わった。面談の予約数は、導入前は30日間で150件だったが、導入後は同じリード数で、わずか1週間で350件以上に達した。これにより、年換算で6000万ドルのパイプラインが創出され、4カ月以内に新規顧客を300社以上獲得した。

 重要なのは、AIによって増強されたこの能力によって、「ツー・ピザ・チーム」(アマゾン・ドットコムの用語で、2枚のピザで足りるほどの小規模なチームを指す)による迅速なグローバル展開が可能になったことだ。主要市場に次々と拡大し、現在このエージェントは米国、カナダ、英国、アイルランド、アフリカ、日本で稼働している。オーストラリア、ニュージーランド、南アジアなどへの即時拡大も計画されている。