-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
ESG投資家の意識は「理想」から「現実」へ
つい5年前まで、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資は市場の革命として喧伝されていた。理想主義的な若い投資家たちが主導し、投資を根本から変えるものと目されていた。だが5年の歳月と数度の経済ショックを経て、この革命は「再調整」に近くなっている。といっても、ESGが消え失せたわけではない。筆者らの研究では、投資家の熱が失われたのではなく、より現実的でリスクを最優先に考えるアプローチに収束したことが明らかになった。
ESGに関する研究の大半は、ある一時期の投資家の考え方や意識を捉えているにすぎない。筆者らは、ESGに対する見方が、状況の変化とともにどのように変わっていったかを確認したいと考えた。そこで、2022年から毎年、同じ調査手法を用いて、米国の個人投資家全体の傾向を反映した全国規模の調査を実施し、それと併せて大口のアセットオーナーおよびアセットマネジャーの調査も行ってきた。研究結果は明白だった。
ESGへの熱意はただ薄らいだのではなく、一定の方向に収束している。若年層と高年齢層の個人投資家の間にあった差は大幅に縮まり、個人投資家の見方は、機関投資家と同様にリスクを最優先に考えるスタンスに近づいている。この変化は、投資家が実際にESGをどう評価しているのかという事実を明らかにしており、投資家と企業の双方に重要な意味を持っている。
当初の分断:ESGをめぐる世代間の違い
筆者らが2022年に初めて個人投資家の調査を実施した時、その結果は主流のナラティブを裏づけているように見えた。ミレニアル世代やZ世代の若い投資家は、環境問題や社会問題に深い関心を示していた。若年層の約70%が気候関連のリスクを非常に懸念していると回答し、一方、高年齢層で同様に回答した人は35%に留まった。職場における多様性、所得格差、ガバナンスの問題などの社会的課題についても、おおむね同じような差があった。
さらに注目すべきなのは、若年層の投資家が、ESGの成果のためなら資金を費やしてもよいと考えていた点だ。若年投資家の典型的な回答は、環境や社会の改善のためであれば、投資資産が6~10%減少しても受け入れるというものだった。資産25万ドル以上の富裕層の若い投資家の間では、10%以上のリターンを犠牲にしてもよいという意向が示された。対照的に、高年齢層の投資家の圧倒的多数は、いささかも資産を犠牲にするつもりはないと答えた。
当時、この調査結果は、世代間の価値観が持続的に変化していることを示す証拠であると、広く解釈された。そして、アセットマネジャー、取締役会、政策立案者は数十年にわたって、この変化に対応していく必要があるとされた。
何が変わり、なぜそれが重要なのか
2025年になると、当初の解釈はもはや成り立たなくなった。






