投資家の見方が大きく変わってきたESG投資の現在地
Illustration by Julia Allum
サマリー:かつて若い世代の投資家を中心に市場の革命と期待されたESG投資は、数度の経済ショックを経て大きな転換点を迎えている。筆者らの継続的な調査により、リターンを犠牲にしてESGを重視するという世代間の意識差が、現在ではほぼ消滅したことが判明した。とはいえ、投資家はけっしてESGを見限ったわけではなく、理想主義から現実的な「リスク管理の枠組み」へと評価の視点を収束させつつある。データをもとにESG投資の「再調整」の実態を分析した。

ESG投資家の意識は「理想」から「現実」へ

 つい5年前まで、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資は市場の革命として喧伝されていた。理想主義的な若い投資家たちが主導し、投資を根本から変えるものと目されていた。だが5年の歳月と数度の経済ショックを経て、この革命は「再調整」に近くなっている。といっても、ESGが消え失せたわけではない。筆者らの研究では、投資家の熱が失われたのではなく、より現実的でリスクを最優先に考えるアプローチに収束したことが明らかになった。

 ESGに関する研究の大半は、ある一時期の投資家の考え方や意識を捉えているにすぎない。筆者らは、ESGに対する見方が、状況の変化とともにどのように変わっていったかを確認したいと考えた。そこで、2022年から毎年、同じ調査手法を用いて、米国の個人投資家全体の傾向を反映した全国規模の調査を実施し、それと併せて大口のアセットオーナーおよびアセットマネジャーの調査も行ってきた。研究結果は明白だった。

 ESGへの熱意はただ薄らいだのではなく、一定の方向に収束している。若年層と高年齢層の個人投資家の間にあった差は大幅に縮まり、個人投資家の見方は、機関投資家と同様にリスクを最優先に考えるスタンスに近づいている。この変化は、投資家が実際にESGをどう評価しているのかという事実を明らかにしており、投資家と企業の双方に重要な意味を持っている。

当初の分断:ESGをめぐる世代間の違い

 筆者らが2022年に初めて個人投資家の調査を実施した時、その結果は主流のナラティブを裏づけているように見えた。ミレニアル世代やZ世代の若い投資家は、環境問題や社会問題に深い関心を示していた。若年層の約70%が気候関連のリスクを非常に懸念していると回答し、一方、高年齢層で同様に回答した人は35%に留まった。職場における多様性、所得格差、ガバナンスの問題などの社会的課題についても、おおむね同じような差があった。

 さらに注目すべきなのは、若年層の投資家が、ESGの成果のためなら資金を費やしてもよいと考えていた点だ。若年投資家の典型的な回答は、環境や社会の改善のためであれば、投資資産が6~10%減少しても受け入れるというものだった。資産25万ドル以上の富裕層の若い投資家の間では、10%以上のリターンを犠牲にしてもよいという意向が示された。対照的に、高年齢層の投資家の圧倒的多数は、いささかも資産を犠牲にするつもりはないと答えた。

 当時、この調査結果は、世代間の価値観が持続的に変化していることを示す証拠であると、広く解釈された。そして、アセットマネジャー、取締役会、政策立案者は数十年にわたって、この変化に対応していく必要があるとされた。

何が変わり、なぜそれが重要なのか

 2025年になると、当初の解釈はもはや成り立たなくなった。

 環境、社会、ガバナンスというESGの3つすべての側面において、かつてのような年齢による大きな隔たりは、ほぼ消え失せた。今日、環境問題や社会問題への関心を報告する個人投資家は、若年層では約45%、高年齢層では38%である。ガバナンスについては、その差は統計上のノイズといえる程度まで縮小している。

 さらに重要なのは、リターンを犠牲にすることへの意思の変化だ。現在、若年投資家の典型的な水準でも、環境問題のために手放してよいと考える投資資産の割合は約4%になり、高年齢層の平均である約3%とほとんど差はない。また、以前は資産規模による差があったが、それも消えた。富裕層の若年投資家がESGのために「資金を費やす」ことへの意思は、資金が比較的少ない若年投資家とほとんど変わらなくなっている。

 それと並行して、ファンドマネジャーによるESG関連のアクティビズム(株主行動)への支持も低下した。現在、アセットマネジャーが企業の環境・社会面の実践に積極的に働きかけることを期待する若年投資家は、約3分の1にすぎない。これは高年齢層とほぼ同じ割合だ。

 これはけっして些細な変化ではない。ほんの数年前までは最も強力とされていたESG支持層が崩壊したことを意味するからだ。(調査結果は以下を参照。Survey of Investors, Retirement Savings, and ESGの2022年版2023年版2024年版2025年版およびInstitutional Asset Managers

ESGは贅沢品

 この逆行をどのように説明できるだろうか。

 一つの見方としては政治の分極化があり、また企業メッセージへの疲れと見ることもできる。だが、筆者らのデータが示唆するのは、よりシンプルな経済的要因だ。多くの個人投資家にとって、ESGは贅沢品のようなものになったのである。

 市場の期待リターンが高く、景気が好調と感じられる時には、投資家は利益が広く漠然としている、すぐには結果が出ない、あるいは結果が読めない取り組みでも積極的に支持する傾向がある。だが状況が厳しくなると、原因がインフレにしろ、市場の変動性や成長の鈍化にしろ、その傾向は薄れる。最後に残るのは、個人の金銭的成果をより重視する姿勢だ。

 重要なのは、このパターンは、投資家がみずからの根本的な価値観を捨てたことを意味するわけではないという点だ。むしろ、ここで顕在化するのは、表明された選好と実際に支払う意思との間に乖離があることだ。ESGへの支持は一般に考えられているよりも、状況に左右されやすいことがわかる。

 順序も重要な要素だ。最初に、2023年から社会的イニシアティブへの支持が低下し始めた。一方、環境への関心、特に気候関連の関心は根強く残っていた。環境問題への支持がはっきりと落ち込んだのは、2025年になってからだ。この事実は、ESG全体への熱意が薄れる中でも、投資家がESGの各要素を区別して考えていることを示唆している。

機関投資家は、理想主義抜きでESGを捉える

 機関投資家を対象とする調査では、個人投資家とは別の、だがそれを補完するストーリーが見えてきた。

 大口のアセットオーナーおよびアセットマネジャーの間では、いまでも広くESGが取り入れられている。彼らの約4分の3は、投資を決定する際にESGの要素を考慮すると回答している。ただし、その理由は往々にして正しく理解されていない。

 機関投資家の圧倒的多数はESGを価値観主導の取り組みではなく、リスク管理の枠組みで捉えている。ガバナンスの要素は意思決定に大きく影響し、最低限必要な条件と広く見なされている。これは重要ではあるが、その多くはすでに価格に織り込まれている。環境面の考慮事項はほぼすべて気候リスクに集中し、中期的展望の材料と見なされている。社会的要素の影響は限定的だが、データセキュリティとプライバシーは例外的に重視されている。

 重要なのは、機関投資家のESGの扱いには偏りがあるということだ。ESGの評価に難があると、強固なファンダメンタルズを持っていても、投資に不適格とされることがある。ところが、ESGの評価が高くても、それが財務面の弱さを補うことはほとんどない。ESGはフィルターの一つであって、リターンを生み出す原動力ではないのだ。

 機関投資家のこのスタンスは、驚くほど長期的に一定している。また、個人投資家の着地点とますます似てきている。

ESGに関する新たなバランス

 この研究で観察された状況は、ESGの終焉を示しているのではない。だが、ある段階の終了を告げている。ESGに関する過剰な主張や幅広いステークホルダーへ向けた言説、そして投資家のESG需要は高まり続けるという前提を特徴とした段階は終わったのだ。

 それに取って代わるのは、より限定的で、現実的なバランスだ。ESGは、リスクが具体的で、時間軸がはっきりしていて、コストが許容範囲と見なされる領域で持続するだろう。気候変動はそれに該当するが、社会的課題の大半はそうではない。

 企業幹部や取締役会、アセットマネジャーにとって、このことが何を意味するかは明白だ。投資家の利他主義を前提にしたESG戦略は脆弱であり、信頼性の高いリスクマネジメントと透明性のあるトレードオフに根差す戦略は、持続する可能性がはるかに高いのである。

 4年にわたる調査から得た幅広い教訓は、投資家がESGに背を向けたということではない。投資家はESGを、種々の制約、機会コスト、変わりゆく経済状況に影響される、他のあらゆる投資判断要素と同じように扱うようになってきたのだ。それ自体、厳しい現実ではあるが、ESGの本質をはっきりさせてくれる重要な洞察でもある。


"Research Reveals a Fundamental Shift in How Investors View ESG," HBR.org, February 18, 2026.