企業が進化するための
3つのアプローチ
こうした右肩下がりの状況から抜け出す上で、企業がやるべきことは3つある。①右肩上がりの時代にできた古い仕組みを壊す、②終身雇用制が生み出す既得権意識を払拭する、③試行錯誤や実験を通じて勝ち筋を見出す、の3つだ。
①は我々の行動やものの見方を縛っている古い皮を、脱ぎ棄てることに似ている。生物の進化と同様に、企業も環境に合わせて様々な特徴や能力を獲得していく。しかし、環境が変わると、それらが逆に足手まといになってくる。氷河期において恐竜のような体は、かえって生き残りを危うくする。過去に獲得した特徴や能力をリセットし、新しい環境に適応するスタートラインに立つことがまずは必要になる。
②の終身雇用制は、日本の大企業に特有の雇用慣行で、日本企業のユニークさをつくり出してきたDNAのようなものだ。しかし、右肩下がりの環境になると、終身雇用制は既得権意識を生み出し、企業の変革を阻害するようになる。また、グローバル化という環境変化の中で、次第に日本企業のユニークさが重荷になってきている面も否めない。我々はいま、DNAすら見直すべき時期に来ているといえよう。
③の「実験」は、右肩下がりの厳しい環境の中で、生き残りに必要な勝ちパターンを発見する上で、唯一の方法といってもいいだろう。生物の進化に例えると、突然変異を起こすことに似ている。様々な突然変異を引き起こし、そこから新しい環境に合ったやり方を発見していくために必要なのが「実験」だ。以下では、この3つのアプローチについて掘り下げることにしたい。