部下のフィードバックへの速すぎる対応がリーダーの信頼を損なう
Illustration by Eliot Wyatt
サマリー:リーダーが従業員からのフィードバックを受けて改善を図る際、その変化の「速度」が評価を大きく左右することがわかった。一般的に迅速な対応は好まれるが、困難な課題に対して急激に変化すると、かえって「不誠実で不自然だ」という不信感を招くリスクがある。一方で、緩やかな変化は内省の結果として信頼されやすい。本稿では、変化の種類に応じた最適な速度や、誠実さを伝えるための内省、理由説明、非言語的シグナルの重要性を紹介する。

リーダーへの評価を左右する「変化を起こす速度」

 従業員からのフィードバックに応えることは、リーダーが成長し、改善を図るための重要な手段だ。しかし、受け取ったフィードバックをどう扱うべきかを判断するのは、容易ではない。意見が聞き入れられたと従業員が感じられるように、すぐに変化を実行に移すべきだろうか。あるいは、自分が行動を改めていることを認めれば、リーダーとしての弱さを露呈してしまうだろうか。

 筆者らは、『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』誌に掲載された最近の研究論文において、リーダーがフィードバックを受けて行った変化を従業員がどう評価するかを調査した。その結果、すべての変化が好意的に受け入れられるわけではないことが明らかになった。それどころか、リーダーにオーセンティシティが欠けている、すなわち改善への努力が中途半端で不誠実であると解釈されてしまうこともあるのだ。

 オーセンティシティを認識されることは、効果的なリーダーシップにとって極めて重要だといえる。オーセンティックなリーダーは信頼を醸成し、コミットメントを引き出し、協働を促進するからだ。筆者らの研究は、リーダーに対する評価を左右する決定的な要因を特定した。それは、変化を起こす速度だ。この知見は、従業員のフィードバックに対処しようとするリーダーにとって重要な意味を持つ。どのように応じるかの選択が、誠実さを認めてもらえるかどうかを決定づける可能性があるからだ。部下から「本物だ」と信じてもらえないのであれば、誰が自己改善に向けた努力をしようと思うだろうか。

なぜ速度が重要なのか

 フィードバックに応じたリーダーの改善の速度と、認識されるオーセンティシティとの潜在的な関連性を検証するため、筆者らはまず博士課程の学生を対象としたフィールド調査を実施した。全米の研究大学に所属する学生205人に、指導教官がリーダーとして改善すべき具体的な点を特定してもらったところ、回答は、メンターシップ、コミュニケーション、研究室の運営など多岐にわたった。

 次に学生らに、指導教官が行動を改めた場合に自分がどう反応するかを説明してもらい、一方のグループには「急速な改善」を、もう一方には「緩やかな改善」を想定してもらった。急速な変化を想定したグループは、自分が望んでいた変化であったにもかかわらず、「不誠実で強制されたもの」「二枚舌」「疑わしい」など、オーセンティックではないと表現する傾向が高かった。

 対照的に、緩やかな変化は、「思慮深く、心からの改善意欲の結果」「その人本来の姿」「人としての成長」の表れといった、オーセンティックな言葉で表現される傾向があった。リーダーを描写する言葉のこの決定的な違いは、行動変化の速度が、学生の指導教官に対する見方を規定していることを示している。急すぎる改善は不誠実だと感じられるのだ。

 2つ目の調査も、この結果を裏づけるものだった。エグゼクティブリーダーシッププログラムの実際のデータ(参加者が360度評価に基づき改善点を特定し、対応するアクションプランを作成したもの)を用い、一般的な8つのリーダーシップ改善計画を特定した。そのうえで参加者2000人を対象に実験を行い、架空のリーダーに関する計画を提示し、そのリーダーが計画通りに「急速に」あるいは「緩やかに」変化したと伝えた。多種多様なリーダーの行動の変化において、参加者は急速な変化は緩やかな変化よりも不誠実であると評した。

 最後の調査では、「変化の種類」によって、オーセンティシティへの負の影響がどう異なるかを検討した。会議のアジェンダを事前に送るといった「変えやすい行動」と、よい傾聴者になるといった「変えるのが難しい行動」を比較した結果、架空のリーダーが容易な変化を素早く行った場合、参加者がそのリーダーを不誠実だと判断する可能性は低かった。むしろリーダーの対応はよいと見なされ、今後もフィードバックを提供したいという意向が示された。

 対照的に、リーダーが困難と思われる変化を素早く実行した場合、参加者はそのリーダーを、誠実さにも対応力にも欠けると見なした。このオーセンティシティ(および対応力)の低下は、参加者が将来フィードバックを提供しようとする意欲を低下させた。

フィードバックへの応え方

 では、リーダーは従業員からのフィードバックを受けて、「どのように」行動を変えるべきだろうか。それは状況によって異なることを筆者らの研究は示唆しているが、問題が即座の解決を要するものか、あるいは長期にわたる困難な変化を要するものかにかかわらず、誠実な努力を正当に評価してもらうための戦略がある。

立ち止まり、内省する時間を取る

 リーダーは行動志向に陥りがちだ。多くのリーダーにとって、秩序立ったアプローチを採用するには忍耐と規律が必要となる。しかし、それこそが、「単に反応している」のではなく、「真摯に応じている」ことを従業員に伝えるために不可欠なことかもしれない。

 フィードバックのプロセスにおいて、感情を認識し、制御することも考慮に入れるべきだ。ネットフリックスでは、従業員が懸念をリーダーに直接伝えることが推奨されており、リーダーも防御的にならず、フィードバックに対してオープンな姿勢を示すことが求められる。同社では、まずはマインドフルネスの視点からフィードバックに応じるのだ。

 以下を自問してみよう。「このフィードバックが自分の至らなさを知るうえで重要な情報だとしたら、どうすれば自尊心に縛られずに受け止められるか」「このフィードバックを共有してくれた勇気にどう報いるべきか」「それが明らかにするのはどのような盲点か」「これらの洞察がリーダーとしての成長にどう役立ち、それをチームに伝えるには何が必要か」。困難なことではあるが、変化の過程を通じて立ち止まり、内省し、思慮深く対応する時間を惜しまないリーダーは、従業員からよりオーセンティックであると見なされるだろう。

理由を説明する

 場合によっては、従業員が最もオーセンティックだと感じる速度で行動を変えられないこともあるだろう。フィードバックに対して即座の対応が必要だと感じたら、なぜそれほど素早く変化させているのか、明確な説明を添えるべきだ。

 研究によれば、上司から提案を採用しない理由を説明された従業員は、再び意見を述べる可能性が高まり、フィードバックの継続的なサイクルが促進されるという。同様に、リーダーは、なぜ従業員の想定よりも短期間で変化が可能なのかを説明すれば、その努力のオーセンティシティを正当に評価してもらうことが可能かもしれない。これを事前に共有することで、対応の速さと誠実さの両方を最大化させる形で変化を実行できるだろう。

 変化の速度について理由を説明することは、建設的なフィードバックを収集する文化の醸成にも役立つ。アドビでは、チームメンバーとリーダー双方の対応力を高めるために、リアルタイムでフィードバックをやり取りすることが推奨されている。パルスサーベイなどのツールは、こうしたプロセスをシステム化し、リーダーが懸念事項に対して説明を添えて対応する定期的な機会となる。

 加えて、変化の中には目に見えやすいものもあれば、そうでないものもある。リーダーは、なぜ、そしてどのように新しい行動を取るのか、詳細な情報を共有すべきだ。何をしようとしているのか、なぜそれが重要なのか、そして長期的にどのように実施し、維持していく計画なのかを語るのだ。リーダーはコミュニケーション不足に陥りがちであるという最近の研究結果を踏まえると、変化を決断した根拠を伝えたり、同様の変化を以前から「検討中」であったことを明確に示したりすることで、「真の変化には時間がかかる」と従業員も納得するかもしれない。

言語・非言語の両方の反応に注意を払う

 筆者らの研究結果における一つの留意点は、それが従業員の「認識」に基づいていることにある。たしかに、リーダー自身はフィードバックに応じたみずからの変化がオーセンティックであると確信しているかもしれない(実際にそうであることもあるだろう)。しかし、リーダーがみずからのオーセンティシティを示すために頼るシグナルと、部下がリーダーのオーセンティシティを判断するために頼るシグナルは、必ずしも一致しない。

 筆者らは、経営幹部を対象とした簡易的な調査も実施した。リーダーおよび従業員としての経験に基づき、オーセンティックな変化とオーセンティックでない変化について記述してもらったところ、リーダーが従業員の懸念に対し、言語的および非言語的な反応の両方に細心の注意を払っていると、変化はよりオーセンティックに見えると幹部らは答えた。たとえば、行動を起こす前にフィードバックを明確にするためのフォローアップの質問をするリーダーは、真摯な関心を示していると受け取られる。より多くの情報を求める姿勢は、リーダーが義務感からではなく、自発的な意欲から行動を変えようとしているというサインを従業員に送るのだ。

 さらに、幹部らによれば、フィードバックに応える際のトーンやボディランゲージも重要だ。ある幹部が述べたように、フィードバックは「贈り物」であり、リーダーはそれを返品したいかのように振る舞うべきではない。むしろ、感謝を表す時間を取ることは、変化への要求に対して真剣に取り組む姿勢を従業員に納得させる上で、大きな効果を発揮する。

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 目標は、行動変化のプロセスをいたずらに遅らせることではなく、自分の意図を強調し、従業員の期待値を明確に設定するために時間を割くことにある。リーダーが、急速であれ緩やかであれ、その変化が熟慮されたものであり、誠実な動機に基づいていることを明確に伝えれば、その新しい行動パターンがリーダーの核となる価値観や人格と一致しているというシグナルになる。そしてそれが、継続的な改善の文化を強化し、結果として従業員のエンゲージメントとパフォーマンスを向上させるのだ。


"Leaders, Consider Pausing Before Acting on Employee Feedback," HBR.org, February 20, 2026.