現在の製品空間から市場機会を捉える

 最後に、製品カテゴリーのレベルで市場機会を発見します。もっともシンプルな方法は、現在の製品・サービスを2軸マトリックスで可視化する方法です。マトリックス上に自社や競合の製品をプロットし、手つかずの領域を探索します。マトリックスを作る狙いは現状の市場をうまく説明することではなく、新鮮な価値提案の切り口を見つけることにあります。

 既存の製品群をひとつの領域に押し込めてしまうような大きな製品空間を描くことがポイントになります。例えば、建材や工事材料などコモディティ化している製品カテゴリーについて、情緒的価値/機能的価値、製品による価値/製品以外の価値という軸を使って既存の製品・サービスをプロットすると、ほとんどの製品が「製品による価値×機能的価値」の象限にかたまってしまうことが考えられます。この場合は、残り3つの象限に新しい価値提案の機会があるということになるわけです。

イノベーションの方向性を明確化する

 フィルターを外し、より広い視野で市場機会を捉えることで、初期段階におけるイノベーションの方向性を、これまでとは異なる次元で明確化し、対象とする顧客、顧客のゴール、想定される問題解決のレベル/スコープ/切り口といった項目で整理することができるでしょう。参考までに、コンビニ弁当の例をあげておきます。

「これまでコンビニ弁当を利用したことがない顧客を含めて、コンビニの顧客にとって弁当の時間を楽しい経験にする。顧客の一時的な関心を喚起するレベルではなく、人々の食生活に浸透していくレベルの問題解決を目指す。解決の範囲は弁当単体に限定せず、サービスやコミュニケーション、そのためのプラットフォームの構築を含む」

 

1.自分の内にある矛盾や思考の偏りを意識化する
2.業界において最も疑いようのない価値観や前提を疑う
3.支配的な考え方や流れの逆の方向に機会を見出す

 

以下の軸を参考に、自社が取り扱っている製品カテゴリーについて、自社や競合の製品群をひとつの領域に押し込めてしまうような大きな2軸マトリックスを描き、潜在的な市場機会を浮かび上がらせてください。