生成AIに奪われる仕事、補強される仕事を最新データで分析
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サマリー:生成AIの登場は、労働市場に非対称な影響をもたらしている。ハーバード・ビジネス・スクール教授のスラージ・スリニバサンらの研究によると、構造化された反復業務を主とする職種で求人が13%減少した一方、分析力や創造性が求められる職種では需要が20%増加したという。本稿では、AIによる「自動化」と「拡張」が各職種に与える具体的な影響と、企業が取り組むべき人材育成の指針を紹介する。

生成AIによって需要が減少した職種、増加した職種

 本稿はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のワーキング・ナレッジによって作成されており、同校教授のスラージ・スリニバサンの知見を紹介している。

 生成AIはあなたの仕事を奪うのか、それとも向上させるのか。これまで労働市場にどのような影響を与えてきたのか。

 2022年11月にチャットGPTがリリースされた後、構造化された反復的なタスクが多く、生成AIに置き換えられる可能性が高い職種の求人は13%減少した。一方で、分析力、技術力、創造性を必要とし、AIによって補完・強化されうる業務を含む職種について、企業の需要は20%増加した。こうした調査結果を、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のフィリップ J. ストンバーグ記念講座教授のスラージ・スリニバサンらのワーキングペーパーが明らかにした。

 これらの結果は、企業が生成AIをどのように導入しているかについて、初期的な手掛かりを提供してくれる。生成AIは企業の効率化を加速させる一方で、従業員には存在そのものが揺らぐような不安をもたらしている。研究チームは米国の求人のほぼ全体をカバーする大規模なデータセットを用いて、2019年~2025年3月の求人情報を分析した。

「生成AIは単に雇用を削減するだけでなく、オーグメンテーション(生成AIによる増強・拡張)が見込まれる職種に新たな需要を生み出しており、人間とAIの協働が労働市場の変革の重要な原動力であることを示唆している」とスリニバサンは述べている。最も大きく減少しているのは、金融とテクノロジー部門だ。

 スリニバサンはワーキングペーパー“Displacement or Complementarity? The Labor Market Impact of Generative AI”(代替か補完か──生成AIが労働市場に与える影響)を香港科技大学のウィルバー・シンユェン・チェン、オハイオ州立大学のサレー・ザケリニアと共同執筆した。

 AIによって拡張される可能性が高い職種は、生成AIで自動化できるタスクと、人間の関与を必要とするタスクの両方を扱っている。拡張されやすい職種ほど、対人スキルや現場での技術的スキルをより多く用いる傾向にある。たとえば微生物学者、金融アナリスト、臨床神経心理士などが挙げられる。金融分野では、投資マネジャーやアナリストがAIツールを使って市場データを処理して評価するが、最終的な判断と意思決定は依然として彼ら人間に委ねられている。

 研究チームは900以上の職種について1万9000以上の業務タスクをオープンAIのチャットGPTを使って分類し、生成AIによる自動化の可能性を評価した。さらに、各職種におけるAIの影響を受けるタスクと受けないタスクの比率をもとに「拡張スコア」を構築した。

 研究では、自動化されやすい職種は、必要とされるスキルの数が減少傾向にあることもわかった。これらの職種について、求人情報に記載されるスキルは7%減少し、新たに求められるスキルも減っている。一方、拡張される可能性が高い職種では、プロンプト作成やAIツールの活用といったAI関連スキルが増えていることが確認された。新しいテクノロジーによって業務フローが変化するにつれて、新しいスキルも出現しているのだ。

 研究チームは、今回の研究において、生成AIが米国の労働市場に与える短期的な影響に焦点を当てており、他の地域への影響や長期的な影響については「(AIの)導入が拡大するにつれて不確実性が残る」と指摘している。

 さらに、企業が生成AI技術をどのように統合するかということが、雇用が減少するか増加するかを左右する、と研究チームは警告している。雇用への影響は職種によって異なることを踏まえて、スリニバサンは企業に対し、次のような提言をしている。

・リスキリングのプログラムに投資し、AIによって強化される職務へ労働者を移行させる。
「生成AIによってスキルの多様性が縮小する職種では、再訓練が不可欠になる。自動化されやすい職種では、労働者が判断力や対人コミュニケーション能力など自動化が困難なスキルを身につけなければ、職を失う可能性がある」

・新しいツールを活用するために、生成AIに関して継続的なアップスキリングを行う。
「業務の拡張が見込まれる職種において、生成AIは求められるスキルの幅を広げ、AIリテラシー、人間とAIの協働、分野特化型のAIアプリケーションに対する需要を高める」

「企業は生成AIを単なるコスト削減の手段ではなく、業務を拡張するツールとして捉えるべきだ」とスリニバサンは述べる。「職種の移行とスキル要件の進化の両方を支援できるように、人材育成プログラムを整合させていく必要がある」


"Research: How AI Is Changing the Labor Market," HBR.org, March 04, 2026.