リーダーに欠かせない「高い視点」を持つために役立つ記事3選
写真提供:アビームコンサルティング
サマリー:『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では、急速に変化する時代を超えて読み継がれる論文、記事を数多く掲載しています。では実際に、DHBR読者の方はどのような論文や記事に影響を受け、仕事に活かしているのでしょうか。この連載では、さまざまな分野のプロフェッショナルとして活躍する方に、おすすめのDHBRの論文や記事を紹介いただきます。初回である今回は、アビームコンサルティングで東南アジア リージョナルヘッド、タイランド チェアマンを務める堀江啓二さんが、リーダーに必要な高い視点を持つために役立つ記事を3本紹介します。

リーダーとして孤独を感じた時
頭の中を整理し、勇気をくれた存在

『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)は、正直なところ、以前はオフィスに届く定期購読誌を、時折手に取る程度でした。転機となったのは、いまから5年ほど前です。当時の社長から“次世代リーダー”として指名され、「もっと視点を上げるために、ぜひ読んでみて」と言われて勧められたことをきっかけに、DHBR電子版を利用するようになりました。

 当時の私は、素材化学ビジネスユニットの責任者になったばかりでした。それ以前も部門のリーダーを務めたことはありましたが、その時、初めて事業責任を負う立場となり、これまでとは異なる孤独を感じるようになりました。人は孤独に陥ると、どうしても視点が狭くなってしまうものです。しかし、リーダーとして、みずから考えて答えを出し、チームを牽引し続けなければなりません。会社からのコーチングやメンタリングの支援も助けになりましたが、DHBRも下がった視点を上げるためにとても役立ちました。

 当時の私は、頭の中がなかなか整理されない状況にありました。しかし、DHBRの論文や記事は物事を俯瞰して解説しているため、これらを読むと自分なりに頭の中が整理されて、問題が言語化されていきました。そして、他の経営者の方々が私と同じような悩みを抱えながらも前に進んでいることを知り、勇気をもらったのです。過去に読んだDHBRの論文や記事で印象に残ったものは共通して、私の頭の中を整理し、背中を押してくれていると感じています。

視野を広げ、未来思考を促してくれる
ジム・コリンズ氏が「ドラッカーにもらった言葉」

 最近では、2025年12月号のドラッカー特集に掲載された、ジム・コリンズさんのインタビュー「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」が印象に残っています。

 これまでとは異なる事業領域の責任者に就いたことにより、リーダーとしての経験の幅の不足や視点の狭さに課題感を持っていた私にとって、このインタビューは視座を補完してくれるものでした。コリンズさんがドラッカーさんから授けられたという「成功できるかではなく、いかに役に立てるか」という言葉は、相手や社会の目線に立ち、50年、100年先を見据え、物事を「未来からバックキャストする」重要性を説いているのだと理解しました。

「エゴではなく、自分ではない何か大きなものにエネルギーを注ぎ込む」といった言葉も深く心に残っています。リーダーは謙虚さを持つことで視点が高くなり、視野が広がるのだという気づきをいただきました。

 年を重ねるほど、人は保守的になってしまうものです。私はもともと、この点に課題感があり、そうなってはいけないという思いが強くありました。そうした思いがある中で読んだ、コリンズさんの「『いかに役に立てるか』という問いは、あなたを最後までやるべきことに向かわせるギフトなのです」という言葉は、私の胸に響きました。

日本企業の課題感を指摘
野中郁次郎教授が遺したメッセージ

 一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生の追悼特集に掲載された、元ハーバード・ビジネス・スクール教授である竹内弘高先生の記事「『二項動態』の実践で築いた知識創造の軌跡」も心に残っています。私が日本企業や社会で働く中で抱いていた課題感とオーバーラップする内容でした。

 米国での勤務経験もある私にとって、野中先生が遺された「Globalize or Die」(世界で戦わなければ未来はない)という言葉には、とても共感しました。また生前に野中先生が指摘されていた「日本はオーバープランニング、オーバーアナリシス、オーバーコンプライアンス」という点も、まさに私の実感そのものです。もちろん、プランニングや品質は重要です。しかし、それらを重んじるあまり、日本では100%、200%の完成度を求め、その結果、スピード感が失われ、前に進めなくなる状態を常々課題に感じていました。

 現在、新しい製品やサービス、イノベーションを生んでいる企業は、米国や中国、イスラエルなど、その多くが日本以外の国々です。日本はプランニングに偏重し、試行錯誤と実行が疎かになっています。この記事は、まさに日本企業が直面している本質的な問題も指摘しています。私たちの組織でも同じような感覚があり、いかに高速でトライアル・アンド・エラーを回すかを考えなければならないと、あらためて実感しました。

仮説思考とスピード感を持って
物事を進める重要性を教えてくれた記事

「なぜ優れたリーダーほど『曖昧な状態』に強いのか」も、高い視点や未来を見据えた視点を持つ重要性を教えてくれた記事です。不確実性が高い時代において、すべてを論理的に整理して前に進めていくことに終始していると、ただ時間が過ぎていくだけで、スピード感は生まれません。本文にある「ストレスにさらされたリーダーは、決まった計画に固執しがち」という指摘は、日本企業の課題そのものです。仮説思考で、どれだけスピード感を持って挑戦できるか。トライアル・アンド・エラーで進めていけるかが重要だとあらためて実感しました。

 以前、若手社員が約1000人所属する組織を率いていた際、Z世代の目線を活かして社内外に向けて新しい価値を生み出す取り組みを行っていました。その時、彼らに説いていたのが、「超主体性」と「ファーストムーバー力」の重要性です。やりたいことを見つけて、いかに行動力を持ってチャレンジできるか。誰も試していないことであれば、どれだけ先んじて動き、実現できるのか。完成度が5割ほどであっても、まずは世の中に出すべきだと伝えてきたのです。

 現在では、パーパスやミッションを持つ企業も増えており、不確実な状況に直面した時こそ、これらに立ち返ることからすべてが始まります。この記事では「アンカー」(揺らぐことのない要)や会社の価値観と表現されていますが、これらが定まっており、企業の中で浸透していれば、組織として前進できます。あらためて、パーパスやミッション、軸や価値観といった、高い視点から軸を定め、迅速に動くことの重要性を認識しました。

グローバルな多様性のあるチームづくりに
米国や欧州発の知見が役に立つ

 私たちの社名であるアビームは「アジアンビーム」(アジアの光線・力)に由来していることから、アジアには強い思いを持っています。出発点は日本ではありますが、日系企業やアジア企業の支援を通じてアジア社会に貢献することが私たちの強い願いです。

 現在、私が管轄している東南アジア地域では、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムの5カ国で約1400人が活躍しています。最も規模が大きいタイのオフィスには500人おり、同国の総合コンサルティング会社としては、事業規模や売上げ、コンサルタント数で、トップを争うポジションまで成長しているところです。

 私がマネージングディレクターを務めてきたタイのオフィスには、タイ人はもちろん、ベルギー人などさまざまな人種の外国籍のメンバーがいます。東南アジア全体では、各ローカルのメンバーに加え、フランス人、インド人、中国人が在籍しているなど、多種多様です。

 このような多様性のあるチームをつくっていくうえでも、DHBRを非常に参考にしています。現在、当社では東南アジア諸国のオフィスの多様性が、将来の私たちのグローバルにおける経営として目指すべき姿ではないかとの仮説を置き、力を入れているところです。その実現には、多様なメンバーにビジョンを語り、共感を得て、彼らを巻き込んでいくことが欠かせません。日本的なやり方や伝え方では理解されない時、DHBRは米国や欧州発の論文も非常に多いため、引用した話を彼ら・彼女らに伝えることで、少しずつ理解を得られるところがあると考えています。また、DHBRにはダイバーシティに関する論文も多く、Z世代や女性の視点など、自分にない視点をもらえて非常に役に立っています。

 タイでは、「持続的成長ができるチームづくり」を目指し、次世代リーダーの育成を通して、組織を駐在員中心からローカルメンバーを中心に移行させるなど、変革を行ってきました。これからは、タイで行った構造改革を他の東南アジア諸国にも広げていくフェーズになります。その際に重要になるのは、いかに高い視座を持ち、その中で、自分自身の思いや主体性を持って進められるかどうかです。

 これまで日本を中心にして物事が動いていた部分を変えていきたいですし、新しいサービスやコンセプトを海外でつくり、日本へ逆輸入したり、グローバルに展開したりできるのではないかと考えています。完璧主義ゆえに足踏みしがちな日本に対し、東南アジアはフットワーク軽くチャレンジできる土壌があります。私はこれからも東南アジアを拠点に、さらなる変革に挑み続けたいと考えています。