意欲の高い従業員のやる気を削ぐマネジャーの行動
French Anderson Ltd/Stocksy
サマリー:エンゲージメントの高い従業員は組織の貴重な原動力だが、マネジャーによる善意の行動が彼らのやる気を削いでいることがわかった。それは、意欲の高い従業員に対し、職務外の追加業務を数多く割り当てるという行動だ。これが従業員の満足度低下や本来の業務のパフォーマンス低下を招いている。本稿では、仕事の割り当てに関するマネジャーの誤解を浮き彫りにし、公平な配分を実現するための3つのシンプルな対処法を提示する。

意欲的な従業員のエンゲージメントを低下させる要因

 エンゲージメントの高い従業員は、組織にとって貴重な競争優位性をもたらす。これまでの研究が示す通り、彼らはエンゲージメントの低い同僚よりも生産性が高く、離職率も大幅に低い。だからこそ、組織はエンゲージメントの高い人材を育成するために多額の投資を行う。

 だが、その投資が、マネジャーの善意に基づくある習慣によって知らぬ間に損なわれているとしたらどうだろうか。

 筆者らの最新の研究では、エンゲージメントへの投資効果を静かに蝕んでいる要因を特定した。その発端となるのは、一見すると単純な次の問いだ。「予期せぬ仕事が発生した際、マネジャーは誰に依頼するか」

 研究では、最も意欲的な従業員はそうでない同僚よりも、体系的に職務外のタスクを多く負わされていることが明らかになった。そして、そのことが彼らの仕事に対する満足度を低下させている。本稿では、研究結果をもとに、新しい仕事の割り当てに関して多くのミドルマネジャーが抱いている誤解を浮き彫りにする。そのうえで、スター社員が最も情熱を持っている「本来の業務」に専念し続けられるよう、より公平な仕事の割り当てを実現するためのシンプルな対処法を提示したい。

 世界的にエンゲージメントがここ数年で最低水準に落ち込み、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウン以来、最大の下落を見せ、生産性の損失は推定4380億ドルに上る。組織にとって、目の前にありながら見逃されているこの問題を放置する余裕はない。

仕事の不均衡な割り当てを招く思い込み

 マネジャーと従業員4300人以上を対象とした10の研究を通じて、筆者らは、本来の職務の範囲外で発生する追加の業務をマネジャーがどのように割り当てるか、そしてその意思決定を左右しているのは何かを調査した。その結果、マネジャーは内発的動機づけが高い従業員、つまり仕事そのものに真の価値や喜びを見出している人々に対して、不釣り合いなほど多くの追加業務を割り当てていることがわかった。彼らこそ、組織が最も力を入れて採用し、引き留めようとしている人材だ。ある6日間の調査では、他の従業員が同等のパフォーマンスを上げ、勤続年数も同じでも、マネジャーは追加業務の69%を内発的動機づけの高い従業員に割り当てていた。

 この本能的な判断は、理にかなっているように思える。こうした従業員は熱意があり、有能で、進んで引き受けてくれるように見えるからだ。しかし、彼らに追加の仕事を割り当てる際、マネジャーは2つの誤った前提に基づいていることがわかった。1つ目は、本来の業務に情熱をそそいでいる従業員なら、どのような追加の仕事も喜んでくれるという思い込み。2つ目は、仕事に対する情熱がバーンアウトを防ぎ、意欲の低い同僚よりもレジリエンスが高いはずだという考えだ。

 しかし、内発的動機づけは特定のタスクに依存する。クライアントへのプレゼンにやりがいを感じる従業員が、ファイルの整理や委員会活動を必ずしも好むわけではない。従業員への調査では、自発的な従業員が本来の業務から引き離された際、仕事の楽しさが低下する割合は、意欲の低い同僚が追加タスクを命じられた場合と比較して3倍以上も大きかった。これがなぜ重要かというと、意欲的な従業員は、やりがいのある仕事にすでに多大なエネルギーを投じているからだ。そこにやりがいを感じられない追加のタスクを割り当てれば、彼らの負担が増えるだけでなく、実際に情熱をそそいでいる仕事から彼らを引き離すことになる。

 エンゲージメントの低下に留まらず、不均衡な仕事の割り当ては本来の業務のパフォーマンスをも阻害することが明らかになった。別の研究では、参加者306人をマネジャー役1人と従業員役2人の3人1組のグループに分けた。マネジャーは、報酬の発生するデータ入力作業を行っている従業員2人のうちどちらかを選んで手を止めさせ、報酬の発生しない退屈な付随業務をさせた。すると、内発的動機づけの高い労働者が74%の確率で選ばれ、その人物の本来の業務のパフォーマンスは低下し、報酬を獲得する機会も減少した。マネジャーが能力を活用しようとしたまさにその従業員が、結果として不利益を被り、仕事の質を下げることになったのだ。