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「自由」と「自在」は異なる
編集部(以下色文字):「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの経営方針(マニフェスト)には「自由・平和・希望」と「自由」が一番に掲げられています。青木社長は、ドラッカーの「自由とは放縦ではなく、選択の責任である」という言葉の通り、より多くの自由の獲得を目指すのはミッション(経営理念)「フィットする暮らし、つくろう。」をより広範に、より効果的に果たすためだ、と強調されています(前回インタビュー参照)。
青木耕平社長(以下略):「自由」と「自在」という2つの似た言葉があります。僕の解釈では、「自在」とは思ったようにできている、思ったようになる、という状態を指していると思う。一方で「自由」は本来、自身の倫理観に忠実に生きる、それが可能な状態のことです。だから逆に、自分の能力なり意志の力なりが、いろいろな理由から自分の倫理観に従ってコントロールできない状態というのは自由ではない。
真の「自由」こそが、すべてのベースになるわけですね。ただ、会社という組織と自由は、相容れない点もありそうです。
「株式会社」を考えてみると、そこには基本的に目的があって、それに沿って意思決定して行動する、ということができなければ嘘になってしまう。僕らの会社でいえば、「フィットする暮らし、つくろう。」というミッションを掲げた以上、それを実現する可能性に向かって歩いていかなければならないし、それが嘘になってしまったら存在意義を失ってしまう。そうならないために、ミッションに即した倫理観を確立する必要がある。それには自由がないと、倫理観に沿って意思決定できないので、自由がすべてのベースとして必要だと考えています。
ミッションである「自由・平和・希望」を集団として堅持するために、どう行動するべきかというポリシー(判断指針)として「正直・公正・親切」があって、それを実行する際はフォーム(行動指針)である「センシティブ・チャーミング・サステナブル」に沿って行動する——そうやって、ふわっと宙に浮いているような概念を、現実という地面に着地させて機能させるためにブロックを積んできた感覚ですね。
「機能しないもの」は不健全を生む
クラシコムにおける経営の役割分担として、お店の世界観づくりや商品選びは青木社長の実妹で「北欧、暮らしの道具店」店長でもある佐藤友子副社長が管轄し、それを実現するための仕組みづくりを青木社長が管轄されています。会社の経営理念やそれを組織に通底させるための仕掛けについては、“仕組み”の一環として青木社長が考えているのでしょうか。
最後に言葉に落とすところは僕がかなり関わっていますが、一人で考えているという感じでもありません。僕はどちらかと言えば、本当のことが知りたいけれど、自分でやりたいことがあるわけではないし、何が起きているのかなと先に観察してしまうところがありますしね。
事象をつい観察してしまう自然科学者のようなところがある、とご自身のポッドキャスト「考えすぎフラグメンツ」などでもお話が出ていました。
そうですね。というのも、僕は「機能しない」「流れが悪い」という状態が嫌なんですよ。機能しないものは、どんどん煮詰まっていって不健全になり、それが自由や希望、平和を蝕んでいってしまう。無駄だな、と思う。それは、コストパフォーマンスが悪いからではなく、目指しているものに対して意味のないものが好きではないんです。自分がこれをやりたい、こうありたい、ということさえ、僕からすると無駄に見えるところもあります。
「フィットする暮らし、つくろう。」というミッションを立てたのも、みんながそちらに向かいやすくなることが目的ではなく、「向かっていることに嘘がない状態」をつくりたいからです。それができれば、インテグリティを要求できる組織になる。この会社やサービスに集ってくれる人たちにインテグリティを求める以上、会社はそれを収められる器にしなければいけないので、経営理念、経営方針、行動指針まですべてがきちんと一貫していて矛盾がない状態を目指す。逆に、そうでないとインテグリティを要求できないですよね。
株式会社クラシコム代表取締役社長
2006年、実妹である佐藤友子氏(現副社長)とクラシコムを共同創業。同社にて07年よりライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営。「フィットする暮らし、つくろう。」をミッションに、現在ではD2C、コンテンツ制作・配信、企業へのマーケティング支援など、ライフカルチャーにまつわる事業を展開中。2022年に東証グロース市場に上場。(撮影:野中麻実子)
SNSでも、エンゲージメントよりインテグリティを重視されているとおっしゃっていたのは、そういう意味だったんですね。
はい。エンゲージメントを求めたことは本当にまったくなくて、インテグリティを要求しているだけです。でも要求するからには、社長である僕自身はもちろん、その会社なり、会社を取り囲むステークホルダーなり、すべてのエコシステムにインテグリティがなければ、要求すること自体が欺瞞ですよね。自分を守りたいという本能と集団の目標や価値観、ルールがきちんとアラインされている(一致している)必要があります。でないと、みんなが自己犠牲を払ってまでインテグリティを示すはずもない。
だとすると、最もこれに拘束されるべきなのは社長である自分自身ということになる。周りからは、「それ自由なの? 何が楽しくて会社を経営しているの?」とよく聞かれるんですけど(笑)。
余談ですが「インテグリティ」といえば、経営誌「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2025年12月号の特集「P.F. ドラッカー『真摯さ』(インテグリティ)とは何か」を、青木社長が佐藤副社長に「読んでみたら」と薦めてくださった、とポッドキャスト「チャポンといこう!」で知りました。特集内で心を惹かれた箇所として、『ビジョナリー・カンパニー』著者のジム・コリンズが、ドラッカーから直接投げかけられた「成功できるかどうかではなく、正しい問いは、いかに役に立てるかですよ」という言葉を紹介してくださっていました。
彼女(佐藤副社長)の最近の課題意識に合うのではないかなと渡しました。「インテグリティ」という言葉は、お題目みたいに空疎に響きがちじゃないですか。本当すぎて嘘っぽく響いてしまう。僕らのミッションである「自由・平和・希望」もそうです。でも、ドラッカーのインテグリティによる一貫性が多分そうさせない、すごく稀有な存在という印象です。(明日4/26公開の記事に続く)
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<ご注意>
・PDFのダウンロードには、おすすめ論文・インタビューなどのメルマガが届く「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー電子版」無料会員へのご登録・ログインが必要です。
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『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2025年12月号
P. F. ドラッカー『真摯さ(インテグリティ)』とは何か
ピーター F. ドラッカーが逝去して20年。人間と社会の本質に迫るその思想は、いまなお世界の知識人に影響を及ぼし続けている。本特集ではドラッカー自身が何度も指摘していた「真摯さ」(インテグリティ)の重要性にあらためて光を当て、いまこの時代にどのように向き合っていくべきかを考える。
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