ペルソナの構成
ペルソナの使いやすさは、生き生きとした描写がありながら、ボリュームとしてはコンパクトにおさまっているところにあります。その効果を最大化するために、ペルソナは、わたしたちが本来的に持っている人間を理解する能力をふまえた構成になっています。具体的には、顔写真、プロフィール、物語、セリフ、3つのゴールといった要素によって構成されます。

顔写真
わたしたちは顔の表情を介して、相手の考えや感情を理解します。顔写真は、ペルソナに感情移入するための入り口のような存在です。証明写真や、逆に出来すぎた写真は避け、リアリティーのある写真を採用します。人物の背景に実際の環境が移っているとより効果的です。
プロフィール
対象となる顧客の基本データです。名前、年齢、職業、年収、居住地といったデモグラフィックデータやその他の基本特性を表記します。ペルソナは、マーケットセグメントを明らかにするツールではありませんので、必ずしもすべての項目を掲載する必要はありません。ここで最も重要なのは名前です。名前があることで、顧客を抽象的な「顧客」ではなく、一人の具体的な人物として認識することが可能になります。
セリフ
ゴール、価値観、行動パターンなど、ペルソナのエッセンスを象徴的に表すセリフを、ペルソナの生の言葉として掲載します。セリフがあることによって、ペルソナがあたかも実在する人物のように感じられるようになります。
3つのゴール
顧客のゴールは、インサイトの核であり、あらゆるペルソナに欠かせない最も重要な要素です。第4回でご説明したように、ゴールを3つのレベルのつながりとして定義します。
具体的なゴールは、製品やサービスを使って顧客が具体的に達成したいこと、得たい結果のことです。感情レベルのゴールは、顧客は何かを経験するときになりたい感情を表します。意味レベルのゴールは、顧客の長期的な願望や理想の状態を表したものです。ゴールの数に決まりはありませんが、基本的には具体的なレベルのゴールを3つ、感情レベル、意味レベルのゴールをそれぞれひとつ設定するようにしています。
物語
獲得したインサイトをひとつひとつの文章の中に慎重に埋め込み、ゴールをめぐる物語として統合します。文字数が限られているため、一文も無駄にしてはいけません。要素としては、背景や状況、行動や相互作用、信念や思い込み、価値観、態度、フラストレーション、知識や能力、感情やモード、そしてゴールが含まれます。物語はペルソナの中心的な存在です。物語によってインサイトに命が与えられます。