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経営幹部はAIを成長のためのツールと考えていない
会議室に集まった経営幹部に、AIが彼らのビジネスにどのように役に立つと思うか聞いてみるとよい。おそらく、コスト削減や人員削減、プロセスの迅速化、無駄のないオペレーションといった答えが中心を成すだろう。効率、効率、効率──。お決まりの反応だ。だが、それはひどく見当違いでもある。
金融業界の経営幹部を集めたラウンドテーブルで、筆者らは少し異なる質問を投げかけてみた。「同規模の資産管理会社が2つある。一方はAIを有効活用し、もう一方は活用していない。3年後の前者の企業価値は、後者の何倍になっているか」。すると、平均的な回答は2.35倍、つまりAIを活用すれば135%の成長を実現できるというものだった。別の言い方をすると、経験豊かで洗練された経営幹部たちは、AIを使えば3年以内に企業価値が2倍以上になりうると考えている。これは驚くべきコンセンサスだ。
しかし、ここに問題がある。同じ経営幹部に、実際にどの領域のAI投資に力を入れているか聞くと、ほぼ全員が「効率化」と答えた。AIを成長のためのツールと考えたことは一度もないと答えた経営幹部も複数いた。
経営幹部が考える、AIができることと、実際に活用している領域のギャップを、筆者らは「成長の死角」と呼んでいる。これは企業に、予想以上に大きな代償をもたらしている。
筆者ら3人は、金融、マーケティング、そしてAIの分野で数十年の経験を持つ。うち2人(プントーニとベナルティ)は行動科学者で、もう1人(ロング)は金融業界のシニアリーダーだ。本稿では、最新の研究と実務経験に基づき、AIが企業の持続的な価値に与える驚くべきレベルの影響を探り、最後に、その目標をいつ、どのように達成すべきかを判断するのに役立つ一連の質問を示したい。ここでは企業価値を、コアコンポーネント、収益、費用、評価指標(マルチプル)に分解し、それぞれに対するAIの影響を探る。具体的な議論にするため、本稿は資産管理に焦点を絞るが、このアプローチはあらゆる業種に活用できる。
なぜ効率だけではダメなのか
AIを活用してコストを削減するメリットはたしかに存在する。実験では、知識労働全般において一貫した生産性の向上が確認されている。ある大手ソフトウェア企業で行われた大規模なランダム化比較試験では、生成AIを活用したカスタマーサービスツールにより、従業員の生産性は10%超向上した。また、ソフトウェア開発者約5000人を対象とした調査でも、25%以上の生産性向上が確認された。資産管理の分野では、AIによって顧客オンボーディングを数週間から数日に短縮でき、パーソナライズされた顧客資料を作成し、アドバイザーのミーティングの準備やフォローアップを支援できる。
こうしたメリットは重要だ。だが、限界もある。筆者らが最近の論文で示した評価の枠組みによれば、楽観的な仮定(企業のコスト基盤の半分がAIで改善できるタイプのもので、実際平均10%のコスト削減が可能)でも、総コストに対するインパクトは5%程度に留まる。これを代表的な資産管理会社に当てはめると、企業価値の押し上げ効果は10%程度だ。
10%にも一定の意味はある。だが、135%にはとうてい及ばない。
その理由は単純な算数の問題であり、どのようなビジネスにも当てはまる。コストはゼロまでしか削減できないが、収益の伸びに上限はない。さらに重要なのは、投資家が注目するのは現在の収益ではなく、将来どれだけ利益を上げられるかだ。とりわけ、成長期待の評価プレミアムは極めて大きい。
筆者らの調査では、年5%の有機的成長を遂げる資産管理会社は、それ以外は同一条件で年3%の成長を遂げる会社よりも、企業価値が約50%高い。年7%で成長する企業なら、企業価値の差は122%となる。これらはけっして大胆な仮定に基づく予測ではなく、市場が企業を評価する方法、すなわち収益倍率を反映している。収益倍率は、持続的な成長が見込まれる時、劇的に上昇する。







