AIに選ばれるブランドを築く3つの実践的な方策
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サマリー:AIアシスタントが、消費者が商品検索をする際の入り口となる中、ブランド間の競争は従来の認知度争いから「AIによる解釈しやすさ」を競う構造へと変化している。AIは感情的なナラティブではなく、明確に構造化された製品属性や第三者によるエビデンスをもとに推奨ブランドを選ぶ。本稿では、ブルックスなどの事例や「AIの想起シェア」という新たな指標を通じ、AIに選ばれるブランドを築くための具体的な実践法を解説する。

ブランド間の競争は、もはや消費者の注目の奪い合いではない

 筆者らがチャットGPT、クロード、ジェミニなどの主要なAIシステムに、お勧めのランニングシューズを提案させると、いつも回答に出てくるのは、比較的小規模なブランドであるブルックスだった。一方、世界最大のスポーツブランドであるナイキがAIの回答で言及される頻度には、大きなばらつきがあった。この傾向は、AIシステムを介した商品検索において、ブランド間の競争のあり方が根本から変化していることを示している。

 ブルックスは、幅広いライフスタイルを対象とするナラティブを軸として、ブランドを構築してきたわけではない。技術的な性能を向上させること、そして特定のランナーのニーズに合わせることに注力してきた。元CEOのジム・ウェーバーの下で、事業範囲を絞り込み、隣接カテゴリーから撤退し、生体力学の研究と製品エンジニアリングに投資した。「ガイドレール」や「DNAロフト」などのテクノロジーは、明確な問題を解決するために開発された。それと同じくらい重要なのは、ブルックスが、こうした解決策を的確な言葉で説明できるコーチ、臨床医、専門小売店から成るエコシステムを構築したことだ。言い換えれば、ブルックスは、「解釈しやすい」ブランドをつくり上げたのである。

 AIシステムは、商品の属性やエビデンスが明確なブランド、つまりユーザーのクエリに応じて、その価値を明確に説明できるブランドを好む。筆者らの研究では、ノートPC、ペットフード、クレジットカードをはじめとする15の小売カテゴリーについて、GPT-4o、クロード、ジェミニに同一のプロンプトを入力したところ、716のブランドについて、1000件を超える言及が確認された。ジョージタウン大学マクドノースクール・オブ・ビジネスとバージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネスが共同で実施した本研究は、ある一貫したパターンを明らかにした。それは、ブランド間の競争は、もはや主として消費者の注目を奪い合うものではなくなっているということだ。

 AIは、商品発見の入り口として急速に存在感を高めている。検索エンジンや従来のメディアが露出度やナラティブに基づいてブランドを提示するのに対し、AIシステムは消費者の選択を支援するように設計されている。AI環境では、ブランドはレコメンデーションの候補となることを競い合う。だが、ほとんどのブランドは、そうした環境を前提に構築されていない。

AIは、解釈できるものを推薦する

 筆者らの研究では、なぜ多くのブランドがAIを介した商品発見で不利になるのか、そしてなぜ解釈しやすいブランドであることがそれに対する解決策となるのかを、4つのパターンによって説明している。

 第1に、マーケターが「AI上での可視性・存在感」と捉えているものは、実際にはAIプラットフォームごとの差が大きい。本研究で浮上した716のブランドのうち、チャットGPT、クロード、ジェミニの回答に一貫して登場したブランドは、わずか8.4%だった。ほとんどのブランドは、一つのプラットフォームでの回答にしか現れない。あるシステムでは目立って取り上げられているブランドが、別のシステムではまったく回答に含まれないこともある。

 ブランドは依然として可視性・存在感の向上に投資するかもしれないが、AIシステムがブランドを推薦するかどうかは、それに左右されるわけではない。重要なのは、ある具体的な問題に対しての信頼できる解決策として、AIモデルが自社ブランドにたどり着くかどうかだ。ブランドの属性や裏づけとなるエビデンスが明確に構造化されていると、さまざまなシステムがそこに収束しやすくなる。逆に構造化されていないと、AIの回答におけるブランドの存在感は不安定になり、場合によってはまったく言及されなくなる。

 第2に、複数のAIプラットフォームで言及されるブランドのうち、55%はシステムによって捉え方が異なる。一つのプラットフォームでは「プレミアムな革新的ブランド」と表現されているブランドが、別のプラットフォームでは「低価格の代替ブランド」として紹介されることがある。こうしたことが発生するのは、AIシステムがブランドのメッセージを忠実に再現しているわけではないからだ。AIは、入手できる第三者情報からブランドのポジショニングを推論する。AIモデルは、ブランドが発信したいナラティブではなく、属性とエビデンスに基づいて、ブランドに対する見解を組み立てる。象徴的なポジショニングも、AIが活用できる具体的な製品属性に裏づけられていなければ、ほとんど効果がない。

 この対比は、本研究のデータにもはっきりと表れている。アップルはノートPCとヘッドホンの両カテゴリーにおいて、どのプラットフォームでも安定して言及され、ソニーはヘッドホンのカテゴリーにおいて各プラットフォームでほぼ均等に言及されている。ところが、世界で最も認知度の高いブランドの多くがAIによって言及されていない。ウォルト・ディズニー、スターバックス、マクドナルド、ネットフリックス、IBM、インテルは、筆者らのクエリに対する回答には登場しないのだ。

 著名なブランドであっても、AIの回答に登場する際は、マスターブランドそのものよりも、AIが解釈しやすい個別の製品ラインやシリーズを通して登場することが多い。トヨタはRAV4やハイランダーなどの特定モデルで言及され、コカ・コーラやペプシは無糖タイプの製品を通して登場する。こうしたケースでは、AIは親ブランドの象徴的なブランド価値ではなく、個々の製品が持つ属性に依拠している。

 第3に、ユーザーのクエリによって、競合となるブランドの範囲が決まる。探索的なクエリは目的志向のクエリに比べて、ブランドへの言及が95%多かったが、両タイプのクエリへの回答に登場するブランドは約11%にすぎなかった。AIアシスタントは、ユーザーが問題をどう表現するかに基づいて、レコメンデーションを作成する。ユーザーが「お勧めのランニングシューズ」を尋ねると、AIはある候補セットを生成するが、「ひざの痛みに優しいランニングシューズ」や「オーバープロネーション(過回内)に適した安定性の高いシューズ」といったクエリになると、別の候補セットが現れる。