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サステナビリティ投資が進まない要因
ある企業の最高サステナビリティ責任者(CSO)が、経営陣にある投資案件を提案した。皆、頷き、反対の声は上がらなかった。だが、明確な実施の約束を得られないまま、会議は終了した。多くの会議と同じだ。それから数週間経っても、その提案書は回覧され続け、「もう少し分析が必要」という理由で保留され続けた。
こうしたサステナビリティに関する議論の停滞は、世界中の取締役会で起きている。その原因は、CSOとCFOの使う言葉の不一致にある。CSOは、インパクトや重要課題、サステナビリティ情報開示といった言葉を使う。これに対してCFOやCEOが耳を傾けるのは、あらゆる投資が資金調達のために語らなければならない言葉、すなわちキャッシュフローやリスク、リターンだ。このように使用言語が一致していないと、強力な提案さえも行き詰まってしまう。
デロイトの「2026年CSOベンチマーキング調査」によると、CSOの50%以上が、サステナビリティ中心の価値測定方法やビジネスケースの構築方法をもっと学びたいと考えていた。正式なデータはないものの、その逆も当てはまりそうだ。つまり、最高経営幹部の半分は、サステナビリティに関する経験が乏しい可能性が高い。
デロイトは、2025年7月に開催されたアスペン・ビジネス&ソサエティ・サミットで、サステナビリティのリーダーたち(本稿共著者のトレーシーとピカスを含む)とともに、サステナビリティ投資の価値をもっとうまく提示する方法に関する分科会のファシリテーターを務めた。サミット終了時までに、20人以上のリーダーが、既存の取り組みを継続すると約束した。その後、アスペン研究所が企画した数カ月に及ぶフォローアップセッションを経て、サステナビリティ・リーダーシップ・コミュニティの枠組みが構築された(協力いただいた多くのシニア・サステナビリティ・リーダーに感謝する)。
この取り組みは、サステナビリティに関する報告の枠組み(GRI、SASB、ISSB、CSRDなど)は過去10年で急増したが、いずれもCFOとCSOの隔たりを埋められないという認識から生まれた。社外向け報告の枠組みは、社内での資本配分の決定に有意義な情報とはならない。企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への影響を総合スコアに集約し、さらにセクター指数に変換し、投資家のダッシュボードを飾るにすぎない。こうした指標が、重要な情報開示の役割を果たすのは確かだ。すなわちそれは、投資家にとっては、現在および将来の規制リスクに基づく資本配分を検討するためのツールとなる。
だが、社内の資本配分決定には、まったく異なる計算が求められる。すなわち、個々の代替プロジェクトがもたらすキャッシュフローなどを相互に比較することだ。これには集約ではなく、「平均化の解除」が必要になる。限界経済学の議論において、平均値に説得力はない。
この問題を解決するためには、CSOは資本の言語を話せるようにならなければならない。
実際には、サステナビリティ投資はあらゆる投資と同じように機能する。つまり、4つの方法(現在コストの削減、将来のコストの回避、新たな収益源の創出、または既存の収益源の維持)によって、経済的価値を生み出すのだ。この4つの方法は、あらゆる投資判断が測定する2つの要素、すなわちリターンとリスクに重なる。ほとんどは初期投資を必要とし、その効果は1年から資産の寿命まで続く。投資適格な案件は、考えうるあらゆるビジネスのインパクトを考慮している。
そこで筆者らが提案する枠組みに基づき、CSOがサステナビリティ投資を提案する時に役立つ2つの助言をしたい。
まずビジネスストーリーを語る
どのようなキャッシュフローモデルを成功させるにも、まず根底にあるビジネスストーリー(投資と価値を結びつける因果関係)に経営陣が賛成している必要がある。まず、そのケースが前述の4つの価値創出方法のどれを活用しているか、そしてどれが支配的かを洗い出そう。次に、それを明確に説明する。もし我々が(1回限りでも継続的でも)サステナビリティアクションを取れば、特定のビジネスインパクトが生まれ、その結果として、(1回限りのものであれ長期にわたるものであれ)次のようなキャッシュフローが(やはり1回限りあるいは継続的に)生まれる。
これは単純で自明のことに感じられるかもしれないが、停滞しているケースで最も見落とされがちなステップでもある。チームはデータを持って集まるが、共通のナラティブを持たないため、1時間ほど前提条件について議論した挙げ句、根本的な論理について意見が一致していないことに気づかないまま終わる。ワーキンググループに参加したあるプライベートエクイティ関係者は、このことを率直に表現した。「まず必要なのは数学的な正確さではないことに気がついた。何が本当に価値を生み出すか、つまりビジネスロジックについて意見を一致させる必要があった」。ひとたびストーリーに同意できれば、計算は信頼性の問題ではなく、微調整の問題となる。
定量化できるものは定量化し、それ以外は賭け、または上振れ要因と考える
サステナビリティのインパクトには、定量化できることもあれば、できないこともある。炭素価格のリスクや回避ペナルティの算定はモデル化できるが、ブランドへの影響や評判リスクは、モデル化できないことが多い。少なくとも、財務分析で擁護できるタイプの数字ではない。もっともらしいインパクトをことごとく厳密な数字に落とし込もうとすると信頼性が低下し、質問を浴びせられるとすぐに崩れてしまうビジネスケースを生み出す。それは、対応する言葉がない言語に翻訳を試みるようなものだ。







