安藤忠雄氏は元プロボクサーという異色の経歴を持って独学で建築の世界に入り、みずからの道を切り開いてきた闘う建築家である。「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞して以来、数々の歴史に残る建築を手がけてきた。

 その功績により、建築界の最高峰とされるプリツカー賞をはじめ、世界の名だたる賞を受賞。また、パリで18世紀後半に起源を持つ「ブルス・ドゥ・コメルス」の再生プロジェクトなど、歴史的建造物のリノベーションの分野でもオファーが絶えない。世界を知る安藤氏は、いまの日本をどう見ているのか。

 安藤氏は「建築は完成が終わりではない」と言う。たしかに、建築とは完成後も長く、周囲の環境やコミュニティの中で生きていくものだ。だからこそ、目の前に課題に全力で向き合いながら、いつもその先の時間まで見据えて考える意識を持たねばならない。

 未来に視線を向けた時、重要なのは、既知の打ち手に頼らず、いかに視野を広げておくかだ。安藤氏の数々のプロジェクト経験から導かれた考え方は、混迷の時代を生き抜くための道標となるだろう。その要諦を聞いた。

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住吉の長屋 (大阪府大阪市)。 三軒長屋の中央1軒を打ち放しコンクリートの箱に置き換え、 中庭をその中心に据えた。天候や季節の移ろいとともに生 活する斬新さが世の注目を集めた。
PHOTOGRAPHER MITSUMASA FUJITSUKA