リーダーシップの何が変わり、何が変わらないのか

編集部(以下色文字):アンコーナ教授は長年にわたり、リーダーシップの研究と指導に携わってこられました。これまでの変遷を振り返り、リーダーシップはどのように変化したと見ていますか。

アンコーナ(以下略):リーダーシップには、時代とともに大きく変わった部分もあれば、まったく変わっていない部分もあります。

 まず変わらないものからお話ししましょう。第1に、リーダーにはいまでも「信頼性」が不可欠です。言行を一致させ、自身の価値観に沿って行動しなければいけません。個人のエゴや地位、権力欲によってではなく、もっと大きな大義のために行動すること。信頼性はリーダーシップの土台であり、一度失えば取り戻すのは極めて困難です。

 第2に、「人々を惹きつけるビジョン」を掲げる必要性です。組織のメンバーは、自分たちがどこへ向かっていて、なぜそこを目指す必要があるのかを知りたがっています。先行きが不透明な時であればなおさらです。方向性をはっきり示すことで初めて、人は目の前の仕事に集中し、希望を抱き続けられるものです。

 そして第3の要素として、リーダーには「人間関係スキル」も引き続き求められます。リーダーシップとは本来、他者を通じて、あるいは他者とともに成果を挙げるものだからです。信頼を築き、耳を傾け、コーチし、対話し、多様な視点を理解する能力は、いまも昔も欠かせません。変わった点があるとすれば、それらの関係性の幅が広がったことでしょうか。今日のリーダーは、部門、組織、文化、国、そしてますます多様化するステークホルダーの枠組みを越えて働く必要がありますから。

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 逆に、リーダーシップに関して変化したこととは何でしょうか。

 劇的に変わったのは、リーダーが舵取りを求められている「環境」です。私たちはいま、AI、テクノロジーによる既存産業のディスラプション、地政学的な不確実性、気候変動問題、急速に変化する顧客の期待などに特徴づけられる時代を生きています。変化のペースは加速しており、組織がかつて前提としていた仮定の多くが通用しなくなっています。

 その結果、リーダーは周囲で何が起きているのかを把握し、メンバーがそれを理解できるよう手助けすることに、これまで以上に時間を割かなければならなくなりました。リーダーシップとは、もはや単に方向性を示すだけに留まりません。急激に変化する現実を組織としてどう解釈し、どう効果的に対応していくかを導くところまで含まれるようになりました。

 2つ目の変化は、「テクノロジーリテラシー」の重要性が高まったこと。リーダーはエンジニアになる必要はありませんが、戦略、実装、ガバナンス、リスクについて、情報に基づいた意思決定を行える程度には、AI、機械学習、ロボティクス、デジタル技術について理解しておく必要があります。マサチューセッツ工科大学(MIT)のビジネススクールで学ぶ経営幹部層の間でも、こうしたテーマへの関心は並々ならぬものがあります。テクノロジーはもはや現場の技術問題ではなく、リーダーシップの問題だという認識が浸透しているからです。