リーダーシップの最初のステップは「計画の策定」ではない
smartboy10
サマリー:人を巻き込んで動かすには、まず計画が必要だと考えがちだ。しかし、物事を変えていくリーダーシップにおいて、最初に行うべきは計画の策定ではなく、「方向性の設定」(ビジョンの定義)である。義務感からの「べき論」ではなく、皆で達成したい「ありたい姿」を描き、言語化するところから始めることで、人々を巻き込むことが可能となる。寓話『北風と太陽』をモチーフに、悩めるマネジャーとメンターの対話とともにリーダーシップ論を学ぶ連載、第5回。

リーダーシップの最初のステップ

どうすれば部下の自発性を引き出せるかという問いから始まったメンターとのセッション。自発性はマネジメントの枠の外で、リーダーシップをもって生み出していくことが明らかとなった。

リーダーシップとは「変える」スキルであり、カリスマのような生まれ持った資質ではなく、誰もが後天的に習得できる。そして、その習得のために、コッター教授は3つのステップを示しているという。それが前回の学びだった。

そこでメンターは聞いてきた。

「リーダーシップの最初のステップは何だと思う?」

 私は、用意してきた答えを口にした。

「やはり、計画を立てることではないでしょうか。人を巻き込んでいくのであれば、皆が一緒に動ける拠り所が必要となるからです。計画がその役目を果たすはずです」

「たしかに計画は大切だけれど、それはどちらかというと、マネジメントの話。リーダーシップが最初に行うのは、方向性の設定なの。ビジョンを描くことと言ってもいい」。そう言ってメンターは説明を始めた。

解説:「あるべき姿」ではなく「ありたい姿」を描く

 ジョン・コッター教授によれば、マネジメントの第1ステップは、「計画と予算の策定」です。

 意識されているかいないかはさておき、多くの組織には共有されている未来があり、既存のシステムを運営していく一環として、その未来を着実に実現していくのがマネジメントの仕事です。

 たとえば、老舗蕎麦屋にとって、来年も引き続き美味しい蕎麦を提供していくことは暗黙の了解となっており、「はて、来年もうちは蕎麦屋でいいのだろうか」から始める必要はない。来年の目標──企業で言えば年度予算──を定め、計画を立てれば、それが来年1年の「あるべき姿」となり、皆、一斉に走り出せるというわけです。

 一方、リーダーシップは「変える」行為であり、わざわざ変えてどこに行くのかが問われます。老舗蕎麦屋を継いだ若旦那が、代々続いたこの店を変えるとあえて宣言するなら、まず問われるのは「一体どこに向かうのか」、つまり、何を変え、その結果、今とはどう違う店になるのかという点です。その方向性を言語化しなければ、「変える」という宣言だけが宙に浮き、そのうちに立ち消えとなってしまうでしょう。ですから、最初にビジョンを定める必要があるのです。

 コッター教授は、特に、変革のプロセスにおいて、優れたビジョンは3つの働きをすると言います。無数の細かい判断に迷わなくなること、大勢の行動がおのずと噛み合っていくこと、そして、最初の一歩が、その人にとって苦しいものだとしても、人が動き出すことです[注1]。

 平たく言ってしまえば、ビジョンとは、皆が意欲的に同じ方向に走り出すための、希望の旗印となりうる、ということです。