いま注目のイノベーション論の第一人者が、マーケティングの4Pならぬ、「イノベーションの4P」を提唱する。その4つとは?
2、3週間ほど前のことだ。あるイノベーション・チームが事業の成長見込みについて、精緻に作成したスプレッドシートをもとに、苦労して説明していた。パリッとした身なりの役員たちは、その計算式を理解するために、前提となっている細かい仮説や条件についてたくさんの質問を投げかけた。えんえんと議論が続いた。
私はこの会議にオブザーバーとして参加し、黙って座りながらメモをとっていた。会議が終わると、リーダーは私にこう言った。「今回の検討会議は有意義だった。役員たちを実際に巻き込んで、我々のプロジェクトについて、賛同を得ることができた」。
でも私の考えはちょっと違った。
「役員の1人たりとも、この事業アイデアの本質を説明できないだろうし、その魅力を理解できたとも思えない。あなたは今回の会議をうまく乗り切ったかもしれないが、このアイデアに投資するべきだと役員たちの心を動かしたとは思わない」と、私は意見を述べた。
リタ・マグレイスとイアン・マクミランの先駆的な研究を引き合いに出しながら、私はその理由を説明した。これらの議論を次のシンプルな3つの問いに集約させてみたい。
1.どの程度の事業規模が問題だろうか。
言い換えれば、社内で重要視されるには、その事業機会はどの程度の規模が必要とされるのだろうか。
2.その基準をクリアする事業規模の予測を、簡単に計算する方法はないだろうか。
3.その予測が現実的なものであるためには、どんな要素が必要だろうか。