そこでミシェルは私にアドバイスを求めてきた。我々が話をしていくなかで、妹に限らずイノベーターの誰もが自信を持って正しい意思決定をするための、9つの方法が明らかになった。どれか1つを実行するのには1時間もかからないだろう。

1.見込み客と話をして、彼らの意見を聞く

 彼らの意見はあなたの意見とは違うものだ、ということを肝に銘じておく。友人や家族も見込み客としてよい。妹は「たった1人と話すなんて、ちょっと適当すぎるように思えた」と適切な指摘をくれたが、それでも誰とも話さないよりはよいのだ。

2.見込み客が集まるような場所へ行って、1時間観察する

 妹の場合で言えば、育児中の母親たちがカフェでお茶をしている様子や、日常の用事をすませている様子を観察することだろう。予想しなかった光景や行動があれば書き留めること。それがあなたのアイデアにどんな影響を与えるか考えよう。

3.類似性のあるもの(アナロジー)を調べる

 過去に同じようなことをした人は誰か。公開されている情報をもとにして、それがどの程度うまくいったかを割り出せるか。もし失敗の理由を理解できるならば、失敗事例だからそれをするべきでない、ということにはならない。

4.イノベーションの素質があると思う人に聞いてみる

 ただし、あなたの日々の業務には関係していない人を選ぼう。そうした人に、「あなたならどうするか」と聞いてみればよい。妹は、私とHBRブロガーのホイットニー・ジョンソンに聞いてみた。

5.専門家との人脈をつくる

 もし世界中で3人のみに質問できるとしよう。その3人は誰になるだろうか。自分の人脈のうち誰が、そのなかに入るだろうか。人間は、自分の専門分野について喜んで話してくれるものである。妹は、育児の専門家と連絡を取ったところ、出版社に聞くべきさまざまな質問事項を具体的に聞くことができた。

6.視覚化する

 それはどんな格好や外観をしているのだろうか。スケッチしたり、あるいは模型の見本をつくって、アイデアに魂を吹き込んでみよう。たとえば6枚の絵コンテを使って(漫画のように)、あなたの構想する製品あるいはサービスを、人々がどのように知り、入手し、利用するのか、説明してみよう。視覚化することによって、自分のアイデアをより具体的に理解できる場合も多い。さらに重要なのは、他の人からフィードバックを得るきっかけとなる材料を、あなたが手にできることである。

7.おおざっぱに試算してみる

 ものすごく複雑な計算は必要ない。アイデアの仮説が成り立つために、当てはまらなければならないことは何だろうか。それを理解するのに役立つような、3つか4つの変数による計算である。妹はこうした試算をすることによって、自分のアイデアの経済的な価値を理解することができた。

8.もう少し幅を広げて、前提条件を考察してみる

 これはややこしく感じるかもしれないが、実際には、アイデアが実行可能であるためには「何が事実であるべきか」、と単に自問するだけでよい。あなたはどの前提条件について心配だろうか。ここに挙げた手法のどれかを使って、それに取り組むことはできるだろうか。たいていは上記7の方法がよいだろう。妹の場合は、最も重要な前提条件は、「ポケット版を刊行した場合の、全体の純粋な新規売上」の割合と「高価格本を買うつもりだった客がポケット版を買った場合の売上」の割合の比較だと考えた。

9.過去の自分の行動パターンについて1時間かけて書き出す

 つまり、過去に自分がやってうまくいったことや、うまくいかなかったことを振り返る。その違いは何だったのか。妹の場合で言えば、「懐疑的になっているときはうまくいかない」あるいは「Xさんがおかしい、と言うものは、実際おかしい」といったような分類のことである。このリストが作成できたら、現在のアイデアについてはどうだろうか、と考えてみよう。

 このように簡単にできるチェックによって、事業機会について深く理解することができ、さらに魅力的な構想を練るのに役立つ。そしてそのアイデアが単にノートに記したものではなく、市場で実現するものへとつながっていく。皆さんがやってみてうまく機能した60分間でできる他の方法について、そして私の妹の悩みについてのご意見があれば、是非とも聞かせてほしい。


原文:Nine Ways to Test an Entrepreneurial Idea March 11, 2011