2008年5月、世界で最も権威ある経営思想家とビジネスリーダー35名が一同に会し、経営の未来を話し合った。その模様を、参加者のひとりゲイリー・ハメル教授がお伝えする。2013年2月21日発行のハメル新刊『経営は何をすべきか――生き残るための5つの課題』(ダイヤモンド社)でこのカンファレンスの成果が詳述されている。


 2008年5月にカリフォルニアのハーフムーン・ベイで、35人の著名な研究者とビジネスリーダーが一同に会してカンファレンスが行われた。目的は、21世紀のマネジメントを再定義するための道標を打ち出すこと。

 この2日間のイベントはマネジメント・ラボ主催、マッキンゼー・アンド・カンパニーの後援で開催され、次のような顔ぶれが集まった。学会の重鎮は、C・K・プラハラッド、ヘンリー・ミンツバーグ、ピーター・センゲなど。著名評論家には、ケビン・ケリー(『ワイアード』誌元編集者)、ジェームズ・スロウィッキー(『「みんなの意見」は案外正しい』著者)、ショシャーナ・ズボフなどがいた。革新的なビジネスリーダーとして、テリ・ケリー(W・L・ゴア)、ビニート・ナイア(HCLテクノロジーズCEO)、ジョン・マッキー(ホールフーズCEO)なども参加した。

 各参加者には事前に1時間のインタビューが行われ、次の質問が問われていた。「大企業の今日のマネジメントにおいて、今後数十年間の組織の繁栄を阻害する最大のものは何か。それをふまえ、マネジメントの原則、プロセス、慣行においてどのような根本的改革が必要か」

 一同に会した後、参加者は大小のグループに分かれて見解を述べ合った。カンファレンスの中盤で、グーグルCEOのエリック・シュミットが立ち寄り、すでにアイデアで溢れ白熱していた会場にさらなる見解を投げかけてくれた。

 

 

 議論はパワフルで情熱に満ち、時に緊迫したものとなった。しかし誰もが目的を見失わなかった――企業の命運を決定的に左右する課題、世界中のマネジメント革新者たちの奮起を促すような起死回生の取り組みを打ち出すことだ。

 この作業を進める過程で、全米技術アカデミーが掲げた「21世紀に達成すべき工学上の最も重要な課題」から洞察を引き出す参加者もいた。それらの壮大な課題には「人間の脳のリバース・エンジニアリング」、「医療情報科学の発展」、「炭素隔離技術の確立」などがある(全課題のリストはこちらを参照)。ならばマネジメントを専門とする私たちも同じように、革新の目標を掲げてはどうだろう。