取引相手が「Cクラス」(最高~責任者)の肩書きを持つ幹部だったら、特別のアプローチが必要となるだろうか。カスタマー・アドボカシー(顧客による支援)の第一任者ビル・リーによれば、答えはイエスである。上級顧客から引き出せる支援と、そのためのアプローチを紹介する。


 どの業界でも、「Cクラス」(Chief~で始まる経営幹部)の買い手との契約を勝ち取るのは喜ばしいことだ。経営幹部は通常、持っている予算も大きく、価格よりも品質を重視する。だが、契約が成立したからといって、気を緩めてはいけない。そこからが本当の仕事、本当のチャンスなのだ。Cクラスの顧客は野心が大きく、勉強熱心で、注目されるのを好み、幅広いネットワークを持っている。こうした要素のすべてが、さらなる取引の可能性につながる。Cクラスは買い手として多くの利益をもたらしてくれるが、彼らが支援者になってくれれば、それは何倍にもなるのだ。

 では、野心的で広いネットワークを持つ経営幹部から、どうすればアドボカシー(支援)を引き出すことができるだろうか。相手からの支援と同等の、強力な価値提案をこちらから行えばよい。以下にポイントを示そう。

●まずは約束したものを提供し、問題が起きたら迅速に対応する

 当たり前のことだ。しかし、取引関係が続いていくうちに見過ごされがちになる。こうした基本的な行動があって初めて、顧客の本当の推薦を得られる。相手の求めに継続的かつ迅速に対応することで強固な信頼関係を築かなければ、顧客を支援者とし顧客志向の営業部隊をつくることはできない。

●アドボカシーを業績と結びつける

 一部の企業は、Cクラスの顧客と新規契約を結ぶ際に、推薦や支援活動を求める内容を、最初から契約に盛り込もうとする。それでは相手も嫌気がさすだろう。より価値創造につながるアプローチは、四半期ごとの振り返りのプロセスを設けることだ。具体的には以下のように進める。

1.契約後の最初の四半期を迎えたら、すべての業績指標を顧客とともに見直し、その後3カ月ごとにこれを続ける。目標が達成されているか確認し、できていなければ迅速に問題を解決する。

2.次に、あなたの提供したソリューションが顧客に利益をもたらしていることを確認し、顧客と共同でそれを文書化することを提案する。これは双方にとって大きなメリットとなる。顧客にとってはソリューションの正当性の裏付けとなり、学習の材料にもなり、ベスト・プラクティス構築の基盤にもなる。あなたのほうはケーススタディや顧客の成功体験談を得ることができる。

3.顧客と十分な信頼関係が築けたら(あせりは禁物。第3四半期くらいまでは待つべきだろう)、顧客のネットワークのなかに同様のソリューションを求めている人がいないかどうか、話を振ってみる。この頃には、Cクラスの顧客は知り合いのなかから見込み客を選び、あなたのために話をしてくれる可能性が十分にある。

 このように、相手に価値提供を行えば自然にアドボカシーが育まれるのだ。