●手を差しのべてくれる顧客は、必ずいる
もしあなたの会社が小規模のサプライヤー、あるいは創業まもない会社であれば、Cクラスの顧客は力を貸そうとしてくれるだろう。カーディナルヘルスのCIO(最高情報責任者)パティ・モリソンは、テクノロジー企業にとって理想的な支援者だ。彼女は次のように述べている。「小規模ベンダーの成長と地位確立に、力を貸したいのです。だから、そうした企業が顧客基盤を拡大できるよう、私にできる支援はするつもりです。一方で、規模が大きく地位を確立した企業であれば、私が自分のチームに報いるのに手を貸してほしい。カンファレンスでの製品展示や論文発表など、チームの実績を示すチャンスを提供してほしいのです。それは彼らのキャリアに大きなプラスとなります」
●支援者に成長の機会を提供する
積極的な支援者ほど、人生や仕事における向上心が強い。そこで彼らに、講演やメディアでのインタビューなど、自身の成功や先駆的な考えを披露できる場を用意し、成長の機会を提供しよう。聴衆(そして潜在顧客)も、あなたの会社が重要な成功要因であるというメッセージを受け取るはずだ。
●自社のPRメッセージを、顧客企業のメッセージに可能なかぎり共鳴させる
モリソンは言う。「顧客企業に支援を公表してもらいたいのなら、まずその企業の広報が世間に伝えようとしているメッセージは何かを理解する必要がある。そして、自社のPRメッセージが相手のそれとどう結びつくかを考えるとよい」。たとえば、モリソンがモトローラのCIOを務めていたとき、同社はモバイル機器の活用を治安維持に役立てるという考えを表明していた。したがって、モトローラとビジネスをしている企業は、自社の製品やサービスが治安維持の取り組みにどう貢献できるかを考え直してみるとよい、ということになる。
●顧客による協議会を設立する
これにより、顧客の先駆的な考えにスポットライトを当てることができ、そこから恩恵を受けられる。たとえば、マイクロソフトの「相互運用性に関する上級顧客協議会」(Interoperability Executive Customer Council:IEC)は、世界中のCIOにとって大きなテーマである、技術システムの相互運用性の問題を解決するために設立された。マイクロソフトは優れたCIOやCTO(最高技術責任者)などのシステム系の幹部を、さほどの苦労もなく参加させることができた。協議会にはアテナ(Aetna)、レイセオン、アメリカン・エキスプレス、欧州委員会、インド政府、デンマーク財務省などが名を連ねる。マイロソフトは誰もが気になっているテーマを選び、看板となる大物参加者を引き込むことで他の参加者を集めることに成功した。そして問題に真剣に取り組み、解決策を提示した。協議会には非顧客企業も招き、解決策の立案には競合企業の力も借りることで、マイクロソフトは取り組みへの真摯な姿勢を示した。結果として、同社はCクラスの人々と新たな関係を構築し、ブランド強化をはかり、先駆的思想の権威としての地位を確立することに成功した。計り知れない価値を獲得したのである。こうした協議会の運営には高額なコストはかからず、自社が大企業である必要もない。参加を考える企業が気にするのは、ほかにどんな企業か参加するかである。
顧客、とくにCクラスの顧客は、取引先にあなたを選んだ以上、あなたの成功を望んでいる。それには明白な理由がある。あなたの企業が小規模なら、成功すれば生き残る。大手なら、成功すれば研究開発や製品開発にもっと投資し、ソリューションが改善されるからだ。これは顧客企業の大小や知名度にかかわらず、共通していえることだ。こうした善意は、支援や推薦というかたちでもたらされ、大きな価値となるかもしれないのだ。
しかし、そうしたことは自然には起こらない。ここまでで述べたように、意識的かつ継続的に、その価値を具現化する方法を見つけていく必要がある。
原文:Turn a C-level Customer Into Your Most Valuable Reference July 24, 2012