根本的な透明性が問われ始めたこの時代には、アーススターのような管理システムが、グッドガイドのような消費者向けの製品評価システムに必要なデータを提供するようになる。環境への配慮が価格と同等の競争要因になるにつれて、このようなデータの流れは企業に継続的なイノベーションを余儀なくさせるはずだ。アーススターを設計した産業生態学の専門家、グレゴリー・ノリスはこう述べている。「サプライチェーンの誰かが賢明な行動を取れば、その製品はそれだけ環境に配慮したものになりますが、さらにその製品を買うすべての人々の購買行動も環境志向になるわけです。こうした連鎖反応は、川上にいる多くのサプライヤー企業を環境改善の取り組みに巻き込むことを意味します。つまり、どのサプライヤーでも環境改善に貢献できるということです」
このような「エコロジカル・インテリジェンス」が根付く未来を実現するのは、政治家ではない。根本的透明性を事業のコア戦略に取り入れ推進する、ビジネスリーダーたちである。透明性への取り組みに先んじる企業は、他社にとっての透明性の基準を少なからず引き上げることになる。消費者が購買意思決定において、価格・品質に加え環境への配慮も考慮できるようになるからだ。言うまでもなく、そのような企業は評判を著しく上げるはずだ。
ただしその前に、リーダーは自社のグローバル・オペレーションにおける一般的な慣行について、社内の意識改革を進める必要がある。たとえば汚染廃棄物を遠方のサプライヤーに押しつけて責任を回避するような行いを、改めることだ。優れたリーダーシップがあってはじめて、企業は川上で起こっている現実を否定したり責任転嫁したりせずに認めるようになる。そして環境負荷を低減するためにオペレーションを改善する責任を担い、そうした改善を漸進的ではあるが永続的に行っていくことを世間に表明することができるのだ。
サプライチェーン全体への強い責任という点で、世界的な手本となるのはトヨタである。自動車に対する顧客の要求をサプライヤーにも常に把握させ、協力して改善に取り組んでいる。また、ナイキの姿勢もベストプラクティスとして挙げられる。ナイキのサプライチェーンが搾取工場に依存している実態が発覚したあと、同社は適正な労働環境を促進する取り組みでリーダーシップを発揮するようになった。
サステナビリティに積極的に取り組む企業幹部は、世界中にたくさんいる。しかしそれらは第一歩にすぎず、どの企業も望ましい達成からは程遠い。今後どの消費財メーカーが、LCAデータを完全に透明化して永続的改善を宣言し、製造業全体の環境配慮基準を抜本的に引き上げることに成功するだろうか。どの小売企業が、商品の値札と一緒にLCA評価を表示して、エコロジカル・フットプリントをブランド間の売り場獲得競争の基準にすることができるだろうか。
それを成し遂げる企業はどこであれ、偉大なリーダーが率いているのは間違いない。そのリーダーは21世紀のビジネス史に名を残すことになるだろう。