第3ラウンド:楽観と怠慢
コア事業が競争にさらされる予兆が見え始める――これには自社の新技術とのカニバリゼーションも含まれる。あるいは、主役の企業が提供したことのない、または提供できなかった魅力的なやり方で、競合他社が顧客にアピールするようになる。しかしフリップは、機器から直接ビデオをアップロードできるような通信機能や、撮影してすぐにビデオを編集する(iPhoneで使えるiMovieのような)機能を開発しなかった。スマートフォンによる動画撮影が主流となった時代でも製品が生き残るための開発を、一切行っていなかったのだ。パームの場合、技術で数年も先行していたにもかかわらず、新規参入への障壁や革新的な機能の開発によって技術を防御する策を講じていなかった。四方からの脅威にさらされた後でようやく、社運を賭けて〈Parm Pre〉の開発に挑んだ。アップルが競争的な価格でiPhoneを発売した時、パームはその賭けに敗れた。
ここでポイントとなるのは、このラウンドで最大の収入源となっているコア事業を運営しているのが有力な幹部であるということだ(有力でなければコア事業を任されないはずだ)。彼らにとって、新たな顧客層と販路を開拓し、新たなコア機能を開発するために戦略を変更することは脅威以外の何ものでもない。コア事業から資源を引き出して次の事業を育てるという先見の明を持つ人が社内にいない限り、新規事業はコア事業によって成長の糧を吸い取られてしまうものだ。リーダー企業には残念なことだが、コア事業のオーナーには競合他社の攻撃に打ち勝つ能力はないのである。
第4ラウンド:末期
かつての主役が追う側に回っていることが明らかになると、もはや手遅れである。その企業は危機的状況を迎えており、分割や売却、時には解体されることもある。もちろん、アップルのジョブズや、最近の例ではアルカテル・ルーセントの経営陣のように、有能なリーダーが巻き返しに成功するケースもある。かつてビジネススクールのケーススタディーにも頻繁に取り上げられたノキアは、こうしている間にも、この段階を乗り越えようとしている。
すべてのテクノロジー企業は、このサイクルから逃れられない運命にあるのだろうか? 私は決してそう思わない。しかし社内の組織力学は常に、利益を上げてくれるコア事業を優先し、失敗する可能性をはらむ不確実な新事業をないがしろにする。この現実を打破するためには、本当の意味で戦略的なビジョンと優れた能力が求められる。テクノロジー企業の幹部は、特に第2ラウンドにおいて、重要な問いを自問してほしい――来たる第3ラウンドのシナリオに備えて、事前に十分な投資を行っているだろうか?
HBR.ORG原文:Back to the Boneyard — Palm, Flip...and now RIM? May 6, 2011