戦略とは何か。マイケル・ポーターによれば、他社にはない「独自性」に優れたポジショニングであり、これを担保する「活動システム」の構築であり、そのために「トレード・オフ」を受け入れることであり、したがって「何をやり、何をやらないのか」を選択することだという。彼いわく、TQMやベンチマーキングなどの業務改善や効率化は模倣可能であり、およそ戦略ではない。また、かつて日本企業が低コストと高品質を武器に欧米のライバルを打ち負かしたというが、コストと品質はトレード・オフではなく業務改善の賜物であり、戦略の勝利ではないという。本稿は、彼の代表作『競争の戦略』と『競争優位の戦略』をめぐるさまざまな議論への答えであり、また反論でもあり、これを読まずして、ポーター戦略論を語ることはできない。