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インターネット(そしてデジタル化)への過大な期待と浅薄な予測によって、およそ賢明とはいえない主張や行動が招かれた。たとえば、この新しい技術は、マネジメント、ビジネス、製品やサービス、企業や人材など、ありとあらゆる分野で新旧交代を起こし、それはまさしく第2の産業革命である。ネットの世界では、いち早くブランドの認知を獲得し、顧客基盤を築き、スイッチング・コストを上昇させることで、持続的に成長できる──。こんなことが信じられていた。ポーターは、このような主張がいかに根拠に乏しく、また間違っているか、「業界構造」と「持続的な競争優位」という2つの視点から徹底的に検証する。また、どのようにインターネットを利用すれば、ポーター戦略論の核である独自の戦略ポジショニングを確立できるのかについて論じる。本稿を理解すれば、IT関連のバズワードやトレンドに惑わされることなく、常に本質を追求できるだろう。
インターネットと戦略の関係
インターネットは何より重要な技術である。起業家、経営者、投資家、ビジネス・ジャーナリストやマネジメント研究家の注目が集まるのも無理はない。このような熱気にあおられて、「インターネットによって、これまでの企業や競争に関する既存のルールはすべて時代遅れとなり、何もかも変わってしまう」と考える人が少なくない。
このような反応もやむをえないのかもしれないが、危険である。このような考え方のせいで、ドットコム企業も既存企業も、およそ賢明とはいえない意思決定、すなわち業界の魅力度を低下させ、自社の競争優位を損なわせる意思決定を下している。