マイケル・ポーターの代表作といえば、『競争の戦略』であるが、その後、多くの戦略研究家たちの反論にさらされた。
たとえば、「なぜ競争優位が持続しうるのかについて説明していない」「市場を静的にとらえている」「知識やケイパビリティなどの内部資源を考慮していない」「コスト・リーダーシップと差別化はトレード・オフとしているが、差別化を追求するなかで低コストが実現することがある」「戦略はそもそも企業の優位性のためでなく、顧客に価値を届けるためのものである」等々──。
ポーターはこれらの反論への反論を、「戦略の本質」という論文のなかで、婉曲にそして端然と展開した。ポーター理論に関する解説の大半が『競争の戦略』と『競争優位の戦略』で止まっているため、それ以降のポーター理論を知るうえで重要な論文「戦略の本質」のポイントについて解説する。