2012年の初めに、マグハウンドは閉鎖された。ある評論家は、「○○のネットフリックス」というビジネスモデルが常にうまくいくわけではない明確な証だ、と述べていた。私は、この例は「まあまあ」程度の製品やサービスにおける限界を示していると思う。
マグハウンドの魅力的なコンセプトと比較的簡単な申込み方法は、十分訴求力があるように思えた。どのみち私はしばしば、空港で適当に雑誌を選んだり、飛行機の機内や病院の待合室にある雑誌をぱらぱらとめくったりするのを楽しんでいたのだ。しかしこのサービスに申し込んだ後、雑誌が届くのに非常に長い時間がかかった。新しい雑誌を読もうとしても、機内で別の雑誌を手に取るのと違って、マグハウンドのシステムが私の登録情報を変更するのに数週間かかった。またネットフリックスとは違って、私が喜んで手を出しそうな雑誌を推薦してくれることもなかった。数カ月後、私はマグハウンドを退会した。
「まあまあ」程度の製品やサービスというのは、イノベーションへの取り組みを「始める」には素晴らしい方法である。どんな実験室よりも重要な場所、つまり市場で学ぶことを可能にするからだ。だが、最低限のものをもって魅力的な事業を確立することは困難である。顧客は1度は興味を持って試してみるかもしれないが、再び手を出すことはないだろう。
実用最小限の製品が、平凡な価値提案とならないようにする方法を紹介しよう。
1. 適切な専門知識を持った人材を確保する
業界によって異なるが、設計、プログラミング、化学、販売、あるいはその他さまざまな分野に卓越した能力が必要となるだろう。未開の潜在能力を持った人材が世界クラスに成長することは可能だ。だが、多くの成功したベンチャー企業を見ると、その業界で長く経験を積み、実績のある年配の人材を関与させている。
2. 製品・サービスそのものだけでなく、包括的な提供プロセスやビジネスモデルについて考える
競争優位は、価値の創造、獲得、提供におけるイノベーションからもたらされる。成功のためには、製品の特徴・機能だけでなく、さまざまなことを改善していく必要がある。
3. 学習し、行動する
新規事業における最大の危険のひとつは、製品のリリースに大きな空白が生じることだ。なお悪いのは、アップグレード版を発売する予定が立っていない時である。市場からのフィードバックに基づいて行動する計画がないのであれば、実用最小限のものは、すぐに平凡なものへと成り下がる。
平凡な製品をつくることは、今までになく簡単になった。しかし偉大な製品をつくること、そしてより重要だが、偉大な事業を創造することは依然として難しい。市場からフィードバックを集めるのに十分な、まあまあ程度のものから始めるのは大いに結構なことだ。ただし、そこで立ち止まってはいけない。
HBR.ORG原文:The Dangers of the Minimal Viable Product April 9, 2012