本誌2013年7月号(6月10日発売)の特集は「広告は変われるか」。これに合わせ、HBR.ORGで展開された「広告の未来」特集から8本の記事を厳選し、お届けする。第1回は、現実の出来事をマーケティング・メッセージに取り入れ即座に発信する、「リアルタイム広告」について。組織がこれを効果的に行うために、必要ものは何だろうか。

 

 2013年のスーバーボウルが閉幕した。試合の勝敗は決したが、誰もが興味を抱いているのは、スーパーボウルでのマーケティング戦争の勝者が誰であったか、という点である。毎年、どの企業がどの枠を獲得したか、いくら支払ったか、もっと早くコマーシャルを公開すべきではなかったか、など喧々囂々の議論が交わされるのが常だ。だが、今年のスーパーボウルに限っていえば、最大の話題は広告そのものではなく、ブランドがイベントや消費者とリアルタイムでどう関わったかである。

 テレビ広告のどの枠が一番 費用対効果に優れているか、ということはいつも議論されるが、確かなことが1つある。どれだけ事前に計画しようとも、どれだけキャンペーンをイベントと一体化させることができたとしても、鮮烈な印象を残す方法として「即興」に勝る(あるいは即興より安価な)ものはないということだ。スーパーボウルに合わせて広告を打つ多くの有力ブランドにとって、即興マーケティングというアイディアは明らかに冒険である。少しでもスベったり、品位を落とす言葉を発信してしまえば、その影響はたちどころに広まり、数分のうちにブランドに消えない傷をつけてしまうからだ。しかし蓋を開けてみれば、次のことがわかった――出来事にリアルタイムで反応を示し、それが愉快で好ましいブランドメッセージとして人口に膾炙すれば、最強のマーケティングとなるのだ。

 スーパーボウルの試合中に起こった停電は、ブランドの創造性が試される不意打ちとなった。洗濯洗剤のタイドは、如才なくこうツイートした。「停電は解決できませんが、染みの解決ならお任せください」。アウディは、皮肉なツイートでライバルの高級車ブランドを挑発した。「今、メルセデスベンツ・スーパードームにLEDを送っています」(メルセデスベンツ・スーパードームはスーパーボウルの開催地)。そして、菓子メーカーのモンデリーズ・インターナショナルでは、筆者も加わっているオレオのブランドチームと代理店のパートナーたちが作戦室で頭を寄せ合った末、15,000回以上もリツイートされることとなるこの名文句を世に送り出した。

(ツイートは「停電? 大丈夫です」。画像下部のメッセージは「暗闇でもオレオを牛乳に浸すことはできます」)