これは、予想外だが大きな出来事だった。リアルタイムなコンテンツには利点がある。この世界では、常に何かしら興味深いことが起こっており、それらの出来事に興味を抱く人々は常にいるのだ。デジタル技術とモバイル機器がいつでもどこでも使えるようになり、どれだけ離れた場所にいる人とも、地理、経済状況、年齢の垣根を越えて瞬間を共有することができる。こうした文化的な瞬間の共有に焦点を当てたコンテンツ開発を行えば、マーケターは永らく業界標準であった人口統計学的なターゲティングを脱し、より適切な方法でより多くの人々にリーチできるのである。

 2012年に筆者らは、オレオの100周年を祝うキャンペーンを通して、文化的に意味のある瞬間を取り込むことの効果をじかに体験した。筆者らは世界の文化的発展に光を当て、オレオ独自の切り口で表現した「デイリー・ツイスト」を100日連続で発表した。内容は、「LGBTプライド月間」から「火星探査機の着陸」まで多岐にわたり、新鮮なコンテンツによって世界中で会話を促進することができた。また、タイムリーな内容であったために、消費者のエンゲージメントの水準はキャンペーンの3カ月前と比べ3倍近くになった。

 消費者にリアルタイムに働きかけたいと願うブランドにとって最大の課題は、ソーシャル技術やモバイル技術によって、消費者同士のやり取りが驚くべきスピードで行われるということだ。大手ブランドは、それらの会話から意味を見出すために、膨大なデータを迅速にふるいにかけなくてはならない。さらに、ブランドがそこから得た洞察を行動に転換できるようにするために、組織内で部門横断的にそのデータを使用可能にする必要もある。

 そのようなデータをリアルタイムに収集し、分析し、拡散することによってのみ、組織は多種多様な課題に対処できるようになる。即座に戦略的決断を行う力をブランドに与えることで、企業や代理店は少ないチャンスをものにする優れたメディア戦略を実行できる――たとえば、入手したメディアトレンドを分析し、それを増幅させるべく、広告費をかけたメディア戦略を調整するなどだ。同じように重要なのは、部門縦断的なプロセスを設けることである。これを実現する最良の方法は、全員を同じ部屋に集め、さまざまな部門が(この場以外では目にする機会がないような)データや会話を確認し、評価して、行動を起こせるようにすることだ。

 何より重要な点は、データを視覚化することで物語が生まれ、数字のみでは不可能な方法で組織文化を変えるということである。データが示唆する物事を全員で共有することで、そこから生じるトレンドや課題、あるいはチャンスを理解して行動を起こす責任を全員が担うことになる。互いに耳を傾け、責任を持ち、協働する文化こそ、ブランドがリアルタイムの世界で成功するために欠かせない要素である。


HBR.ORG原文:The Power of Real-Time Advertising February 5, 2013
 

B・ボニン・バウ(B. Bonin Bough)
モンデリーズ・インターナショナル傘下のメディア戦略部門であるグローバル・メディア・アンド・コンスーマー・エンゲージメント副社長。