多忙によるストレスを同僚たちと嘆きあえば、不平、陰口、不機嫌が拡散し、職場に負のスパイラルが生まれる。これを回避するためにブレグマンが提案する方法は、直感に反するものだ。しかし本当にうまくいくか、試してみる価値はあるかもしれない。
ストレスへの対処法についてなら、私はわかっているつもりだ。毎日7~8時間の睡眠と、1時間くらいの運動が必要だ。数分間の瞑想と、バランスのとれた適量の食事も欠かせない。1日を通して、深く穏やかな呼吸を繰り返すことも大切である。
それらをわかってはいる。たったいま、ライスクリスピーとピーナッツバターを混ぜたチョコチップを2皿たいらげたことは、さておき――。私はいつもこんな調子だ。
それに、こうした効果的なストレス解消法を知り、実践していても、やっぱり私はストレスから逃れられない。ほとんどお手上げ状態だ。
今週は、仕事のストレスと私生活の日課が重なり大変だった。3人の子を育てていれば、三者三様に喜びと厄介ごとをもたらしてくれる。そして素晴らしい妻(彼女自身もストレスを抱えている)と過ごす時間もつくりながら、事業を成長させようと努力もした。これらは「良いストレス」といえる。私も家族も健康であり、事業も順調で、財政状況も健全である。
しかし良いストレスであろうとなかろうと、ストレスは望んでもいないのにやってくる――結果がコントロールできないという不安に駆られた時に発生するのだ。そうなると、人は不平や愚痴をこぼし、陰口をたたき、不機嫌になる。そうした言動はすぐに周囲に伝染するので、不平や噂、不機嫌な態度が人々の間に広がっていく。やがて人々は、誰が1番ストレスを抱えているか、誰が1番多くの仕事量にあえいでいるのか、誰の上司が最も理不尽かを競い始める。このことが、皆のストレスをますます高める。
ストレスに押し潰されるのを防ぐと同時に、不平や陰口を言う不機嫌な同僚にうまく対処する方法はないものだろうか。自分が彼らと同じような言動をとることなく、適切に対応するにはどうすればいいのだろう。
彼らの仕事の手伝いを申し出ればよい。
そんなはずはない、と思われるのは承知だ。あなただって――もしかすると彼ら以上に――忙しいかもしれないのだから。手伝うだけの時間とエネルギーがたとえあるにしても、不平不満ばかり並べる同僚に対して寛大な心で接する気にはならないだろう。そのうえ、手伝いを申し出れば、誰が一番多忙かという競争で負けてしまうことになる。でも、ストレスとの闘いには勝つことになるのだ。
人が不平を言うのは、ストレスによって孤独感や疎外感を感じているからだ。噂話をすることで、他の噂好きたちと仲間意識を共有する。上司に対して腹を立てることで、同僚たちと足並みをそろえ一体感を保つのだ。
しかし不平や噂話は、先述のチョコチップ・ピーナッツバター・ライスクリスピーに似ている。それをやっている間は心地よいのだが、その直後にとても不快になるのだ。不平は同僚たちの間に不信感を育み、職場に悲観的な空気を蔓延させる。時間の無駄になり、孤立感を高める。反対に、手伝いを申し出れば絆が生まれる――実はそれこそ、人々が求めているものだ。
たとえば、日本で起こった大震災と津波の被災者を思い出してもらいたい。誰かが真に深刻な危機に直面していたら、人は助けの手を差しのべることに躊躇しないはずだ。人に備わったこのいたわりの心を、より小規模な場に適用するのだ。