予期せぬ手伝いの申し出は、空気や流れをすぐに変えるだろう。負担を分け合おうという提案を前に、不平を言い続ける人などいるだろうか。こうすることで職場に信頼感とポジティブな雰囲気が醸成され、物事が片付くというわけだ。

 それはまた、自分自身の仕事を片付ける助けにもなる。寛大な行いをしたことで気分がよくなり、ストレスが遠のき、生産性に結びつく。誰かを手伝う余裕があるように振る舞うことで、その余裕を本当に持つことができるのだ。

 具体的な方法を紹介しよう。

1. 相手の不平に同意したり競い合ったりせず、ただ耳を傾ける
 共感の意を示しながらも、不平や噂話に参加したり、あなたが知っている噂話を披露したりしないこと。あなたがどれほど多くの仕事を抱え苦労しているかをアピールしてもいけない。ただ聞くのみにとどめる。

2. 相手の困難を認める
 相手が困難でストレスに満ちた状況にあることを、あなたは理解している――このことをごく簡潔な言葉で伝えよう。援護の言葉を付け足してはならない。あなた自身も困難な状況下にあるなら、この対応は難しいかもしれない。しかし相手の訴えに納得する必要はなく、ただ理解したということを伝えるだけでよい。

3. 具体的な手伝いを申し出る
 たとえば、相手が特定の誰かに話をするのを恐れていたら、代わりに話をしてあげよう。個人的な用事、たとえば昼食をついでに買ってあげて、外出の手間を省いてあげるようなことでもいい。相手はあなたの協力に依存し始めるかもしれないが、心配しないように。手伝いを当然のように思われてしまう危険も、たしかにあるだろう。しかし相手は感謝の念を抱き、不平を言うのをやめる可能性のほうが高い。そしてあなたは新たな活力を得て仕事に取り組めるはずだ。そのうち相手のほうが、あなたに手伝いを申し出るようになるかもしれない。高い生産性を誇る良いチームは、このように回っているのだ。

 ある夜、私はどんなに忙しくてストレスが溜まっているかという愚痴を、妻エリナーにぶつけてしまった。妻もまた忙しく、ストレスを溜めているのをわかっていたのに。でも彼女は、どちらが忙しいかなどと競うことはせず、じっと私の話を聞き、共感の言葉を口にした。次の日の朝は私が子どもたちの面倒を見る番だったが、彼女が6時に起きて替わってくれると申し出てくれたので、少し長く眠ることができた。

 これによって、状況が完全に変わった。私は愚痴をこぼすのをやめ、自分がいかに恵まれているかすぐに悟った。翌日、エリナーの仕事が忙しくなった時に私が手伝いを申し出た。それは長く眠るよりよほど気分がよいことだった。

 さて、あなたはこう思っているかもしれない――妻だから手伝うのは当たり前だ。ふたりは人生の伴侶なのだから。職場で仕事の負荷を管理するのとはわけが違う――。でも、本当に違うだろうか? 職場でチームの健全性を保つために、個々人の負担を分かち合うという小さな一歩を踏み出すことはできないだろうか。

 私はいまでも、多くの責任を背負いながら多忙な日々を送っている。あの夜以来、物理的には何も変わっていないが、それでもすべてが変わったといえる。なぜなら、それらの責任は私ひとりが果たすべきものだが、孤独ではないからだ。

HBR.ORG原文:Too Much to Do? Take on More May 10, 2011

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)

CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。