精緻で隙のない戦略を立てることに、限界を感じていないだろうか。そんな時は視点を変えて、「企業が幸せになる物語」を考えよとマーティンは諭す。ただ夢物語を描くということではなく、目的と手段をシンプルにするということだ。


 企業の戦略担当者は、戦略オプションの策定にたびたび苦労する。まず、提案したオプションに信ぴょう性を持たせるにはどうすべきかと悩む。SWOT分析やスプレッドシートに何時間も費やすが、その結果、ひどい場合にはアイデアを却下すべき理由しか見出せない。よくても、アイデアが出てくる時間を遅らせるだけだ。

 次に、現実的な不安がある。自分の戦略オプションはくだらなくて、これを提案したら笑われるのではないかと考える。そして、あちこちで多数のアイデアが死んでいく。十分に検討したアイデアでも、誰かを怒らせるのではないかと心配し、こっそりとゴミ箱に捨ててしまう。こうして内省を重ねた結果、合理的すぎてつまらない戦略が残り、結局は取り下げることになる。

 もし、あなたがこうした状態なら、それは戦略策定のプロセスを真剣に考えすぎているということだ。戦略の策定という行為を、建築のプロセスのように考えているのだ――さあ戦略を立てよう。組み立てる部品はたくさんあり、すべてをすき間なく論理的に組み合わせなければならない。さもなければ、正当な戦略ではない――。