広告の未来は、私たちがこれまで見てきた形のものにはない。エレベーターの中で用事を済ませている人々の役に立ったり、楽しませたりする広告に未来がある。コンテンツと利便性について理解している企業と人々が、成功することになるだろう。

 十分に活かされていないジャーナリスト、ディレクター、デザイナーなどがどれだけいるかを考えれば、これはそれほど難しいことではない。しかし、多くの企業は中途半端に手を出す程度だ。3分間のユーチューブ動画をあちらこちらで見られるようにしたところで、コンテンツへの取り組みとは言えない。

 他に先駆けて、コンテンツと利便性に踏み込んだブランドと人々がある。注目すべき3例をご紹介しよう。

レッドブルは、2007年にレッドブル・メディアハウスという会社を立ち上げた。この会社はみずからを「スポーツ、文化、ライフスタイルに焦点を当てるマルチプラットフォームなメディア企業」と規定している。フェリックス・バウムガートナーの、歴史に残る成層圏からのスカイダイビングについて見聞きした覚えがあるなら、あなたはすでにレッドブル・メディアハウスの仕事について少しは知っていることになる。

 2012年11月、コカ・コーラはデジタルパブリッシャーとして生まれ変わった。同社は出版メディアのインフラを導入し、編集スタッフを雇い入れ、企業サイトを充実したマルチメディア型マガジンに転換した。豊かなオリジナルコンテンツを創造するだけでなく、このプラットフォームは世界中の何百というパートナーから提供されるコンテンツを一堂に集めるものでもある(全面公開しておこう。私の会社、ワンダーファクトリー[Wonderfactory]がその手助けをした)。

ナイキは利便性を追求してこれを極め、製品とサービスの提供企業へと変貌を遂げた。Nike+のアプリやデバイスのラインナップは、アスリートが自身のパフォーマンスを記録し確認する役に立つ。豊富なデータを使用して、ワークアウトの質を上げることもできる。やがて、アスリートがナイキと長年「連れ添う」理由となる、高度にパーソナライズされたコンテンツ体験をつくることになる。

 毎日何時間も、小さな画面で用事を済ませようとしている消費者にとって有効であり続けるために、マーケティング担当者には出版社や技術系企業と同じように考えることが求められている。レッドブルやコカ・コーラ、ナイキのように、製品とサービスを提供する企業に生まれ変わる必要があるのだ。そして、消費者には「何をお売りしましょうか?」ではなく「どうお役に立てますか?」と聞くべきなのだ。

 本当にそんなことが起きるだろうか? バナー広告の先駆者である私は、そんな夢を見ている。

 

HBR.ORG原文:Stop Selling Ads and Do Something Useful February 12, 2013

 

ジョー・マキャンブリー(Joe Mccambley)

ブランドのデジタル・コンテンツ体験のデザインと制作を手がける、ザ・ワンダーファクトリーの共同設立者兼クリエイティブ・ディレクター