コーチングの神、ゴールスミスが特定した「20の悪い癖」は広く知られている。今回はそのひとつ「自分らしさへの過剰なこだわり」について、実例を挙げて戒める。
拙著『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』の中で論じた「20の悪い癖」の1つに、「自分らしさへの過剰なこだわり」というものがある。これはどういうことだろうか。
誰でも、「自分らしさ」と定義されるような行動様式を持っている。前向きなもの、後ろ向きなものを含め、このような行動様式は変えることができない特質である、と私たちは考えがちだ。
こうした「自分らしい」「私はこうなんだ」という行動の多くは、前向きなもの(「私は賢い」「私は勤勉だ」など)もあれば、後ろ向きなもの(「私は人の話を聞かない」「私はいつも遅刻する」など)もある。
「自分らしい」という行動様式を正当化すれば――ほとんどの人はそうしているが――私たちはどんな迷惑な行動もみずから正当化できてしまう。「私はこうなんだ」と言いながら。
数年前に私が接した、あるCEOの話をしよう。彼はリーダーとして優秀だという定評があったが、人をポジティブに評価する能力に乏しいと思われていた。彼に関する360度フィードバックの報告書をチェックしていると、彼は鼻息を荒くしてこう言った。「私にどうしてほしいというのですか。評価に値しない相手でも、とにかく褒めればいいのでしょうか。そんないい加減な人間だと私は思われたくないんです」
「それは、あなたが他人の良いところを認めようとしないことの言い訳でしょうか。いい加減な人間だと思われたくない、というのが」と私は尋ねた。
「その通り」と彼は答えた。それから彼は、他人を褒めない理由について熱弁を振るった。
1. 彼の評価基準は高く、部下がいつも合格レベルに達しているわけではない。
2. 彼は無差別に人を褒めることを好まない。本当に称えたいと思った時に、
称賛の言葉が安っぽくなるからだ。
3. 誰かひとりを特別に称賛したりすれば、チームの結束が弱まるかもしれない。