ところが、中東の女性エグゼクティブは、3方向からの圧力によって、持てる能力を十分に発揮できていない。
・タイムゾーンの違いと文化的価値観によって、極端に働きにくい環境ができている。たとえば、ほとんどのアメリカ人は知らないが、ドバイの週末は金曜日と土曜日である。9時間の時差――ニューヨークの午後2時はドバイの夜11時――や週末の会議によって、本来必要な休養の時間がかなり奪われている。
・働く母親、妻、娘に対して重い文化的圧力がのしかかっている。
・女性に不利な自治体の規制や就業規則がある。
ファイザー、あるいは他の多国籍企業は、どのようにして才能ある女性を支援し、その能力を発揮させることができるのだろう。
私とてすべての答えを持っているわけではないが、研究からはいくつかの有効な取り組みが考えられる。単純な改善策もあれば、より複雑な、文化的要因への適応策もある。たとえば、
・世界時計を確認する。 電話会議を開く場合には、すべてのタイムゾーンのエグゼクティブが不便さを平等に分かち合えるよう調整する。週末や祝日に関する地域ごとの習慣にも配慮する。
・孤立を緩和する。 型を破ることは大きな代償をともなう。中東の女性エグゼクティブは、仲間からの助言や支援を受けられるネットワークから大きな恩恵を得るだろう。
・現地の専門家と強力して、障害を克服する。 中東の女性専門職の多くは、生活で生じる雑務についても不利な状況に置かれている。電気技師から緊急時の育児まで、あらゆることを支援するコンシェルジュ・サービスを設けるとよい。
・家族への支援を強化する。 育児に加えて高齢者のケアも大きな問題になっている。インドや中国では、従順な娘が年老いた親の世話をするという親孝行の伝統がある。
人材の発掘と、新興国市場への進出――多国籍企業は、このふたつをめぐり模索の途上にある。人材活用の方法を見出すことは、新興国市場での成功のカギとなるのだ。
HBR.org原文:Women in Emerging Markets: Tap Into Their Talent, January 26, 2010.