こうした理由から、ビジネスプランのことはあまり心配しなくてもよい。しかし、自分の考えを整理したり、投資家へのプレゼンを改善したり、チームの方向性を1つにまとめたい場合には、以下のポイントを検討してほしい。
1. 目的を明確に打ち出す。ハート、ビジョン、使命など、呼び方は何でも構わない。ビジネスを行う理由――当面の大きな目標――を明確に打ち出す。
2. どんなアイデアや計画よりも、チームが重要である。優先事項のトップ3をすべて「人」とすべきだ。
3. 大望を持ち、小さく始め、規模拡大や失敗を早期に経験する。レダーハウゼンが助言するように、「小さなスタート地点」を適切に設定する。これには通常、自分の製品・サービスに対する人々の購入意欲や試行意欲を測ることが求められる。
4. 特定のセグメントやニッチ市場に狙いを定める。起業の際には、自分がナンバー1となれる領域はどこかを考えることが必須である。ほぼどんな場合でも、この戦略に従うことで、巨大な市場にただ新規参入するよりも大きな成功を収めることができる。
5. 自分のビジネスモデルを理解する。財務予測を延々と並べたエクセル資料をつくっても、初期段階では判断できない。それよりも、いかにして稼ぐかのほうが重要である。収益を上げる基本的な方法を把握しておこう――それは商取引だろうか、あるいは広告や購読料だろうか?
ビジネスプランのつくり方を「塗り絵」のように簡単に教える、ハウツー型の講座、書籍、テンプレートはいつの世にも存在する。これらのツールは、構造化されたアプローチでは役に立つが、間違った判断に導く可能性も高い。事業の核となる精神や、人々の共感を得る可能性を明らかにすることよりも、計画を完成させることばかりが重視されるからだ。計画の策定は達成感を与えてくれるが、その計画から実際に何を得られるだろうか? ワークシートを埋めることは、自分のビジネスに対する情熱や目的に正面から向き合うこととは違う。起業初日から、ハートがなくてはならないのだ。ビジネスプランがどれだけ入念なリサーチに基づいたものであっても、アイデアを支える真のハートと、それを行動に移す気概がなければ価値はない。
HBR.ORG原文:Great Business Don't Start With a Plan May 16, 2012

アンソニー K・チェン(Anthony K. Tjan)
ベンチャーキャピタル会社Cue Ballの創業者、CEO兼共同経営者。コンサルティング会社Parthenonの副会長も務める。代表作に共著Heart, Smarts, Guts, and Luck(HBR Press)がある。