経営層に占める女性の割合が低いのは、世界的な傾向だ。女性が経営層に加わり活躍するためには、スポンサー、つまり確固たる支援を提供してくれる上級管理職の存在が欠かせないという。スポンサーとの連携による女性人材の活用を、体系化している企業の事例を紹介する。


 共通の目的を持つ女性たちが、会社の支援を受けて社内で草の根的にグループを組織することは、従業員と雇用者の双方にとってきわめて有益だ。この不況下においては、特にそのメリットは顕著である。これらのネットワークは部門横断的な女性どうしの絆を生み、リーダーとしてのスキルを学び実践する機会を提供し、次のステップへと進むための自信を深めてくれる。参加者の出世・昇進を後押しするのだ。

 だが、問題もある。こうしたネットワークは往々にして、不平をこぼし合うだけの集団へと容易に成り下がってしまう。ある多様性推進リーダーの言葉を借りれば、「この会社で女性であることの不運」を嘆くだけの集まりになる。こうした状況では、助け合いは生じるものの、自分を次のレベルへとステップアップさせる役には立たない。

 次のレベルに進むためには、もっと具体的なもの――「スポンサー」が必要だ。スポンサーとはメンター以上の存在で、昇進を後押ししてくれる上級管理職を指す。さらにこの人物は、庇護する者に有益なコネクションを紹介し、成功の秘訣をわかりやすく教えてくれる。そして何より重要なことだが、支援の労を惜しまない。ある女性の表現によれば、スポンサーとは「あなたに別の現実を与えるために、あなたに代わり直接影響力を行使できる人物」であるという。

 スポンサーを持つことは、Cスイート(最高○○責任者)の地位を目指す女性にとって重要な課題である。センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシーが「女性の離職と復職」をテーマとする研究のなかで行った調査によれば、きわめて有能な女性の89%がスポンサーを持たず、68%がメンターを持っていなかった。

 先見の明のある企業は、こういった隠れた不平等が、有望人材の発掘と育成の障壁になることを認識している。賢い雇用者は、このような戦略的に重要な関係が偶然発生するのを待つのではなく、みずから仲人役を買って出るのだ。

 アメリカン・エキスプレスが2008年末に行った調査によれば、同社の全従業員の半数以上が女性で、上位500人の役職者のうち3人に1人が女性だった。しかし他の多くの企業同様、最高幹部層における女性の割合は少なかった。この壁を破るために、同社はCEOケン・シュノールトの全面的なサポートの下に、「人材パイプラインと経営層に女性を」というプログラムを開始した。有望な女性人材を発掘・育成し、組織の最も上の2階層に女性が到達すること、そして女性が経営陣と交流し認知を得る機会を増やすことを目的としている。また同社は、「自分と似た人間を重用する」という無意識の偏見を減らすために、考え方やコミュニケーション法、問題への取り組み方の多様性に対する意識を高める研修を実施している。