本誌2013年8月号の特集に合わせ、HBR.ORGから“起業の心得”をテーマに精選した記事をお届けする。第6回は、シリアル・アントレプレナー(起業を繰り返す起業家)に固有の資質について。これらは一見、至極当然の要素に思えるかもしれない。しかし大規模なアンケート調査と統計で明らかとなった傾向は、能力開発に取り組むうえで役に立つかもしれない。
起業家マインドを持つ人材(および彼らが生み出すアイデア)は、組織にきわめて大きな価値をもたらす。当社(調査会社のターゲット・トレーニング・インターナショナル)では、シリアル・アントレプレナー(起業を繰り返す起業家)に対する多変量解析を実施し、彼らに特有の5つの個人スキルを特定した。これらのスキル(「ソフト・スキル」と呼ばれることも多い)は時間をかけてゆっくりと形成されるものだ。調査では主に、複数の事業を立ち上げて成功と失敗の両方を体験したことのある人物を対象とした。
調査対象者の個人スキルを評価し、彼らの成績を対照群と比較していくと、起業家マインドを持つ人々はある特定のスキルセットを有していることがわかった。実際、これらの5つの個人スキルについて調べるだけで、その人がシリアル・アントレプレナーになるかどうかを90%以上の精度で予測することができた。
優れたシリアル・アントレプレナーは、他人の考えや信念、行動を説得によって変える説得能力に秀でていた。この調査では説得能力の定義を、「他者を説得し自分のミッションに参加させる能力」とした。この結果は、いくつかの設問――「私は周囲から、人にイエスと言わせる能力に長けていると評価されている」「私が行うプレゼンは説得力があるという定評を得ている」など――を6段階で自己評価してもらうことで導き出された。人材を採用したり、投資家やステークホルダーの賛同を取り付けたりするうえで、起業家には優れた説得能力が必要となることに疑いの余地はない。