大方の予想通り、起業家はリーダーシップにも秀でていた。調査では、優れたリーダーの定義を「訴求力に富む将来へのビジョンを持つ人物」とした。評価に用いた設問には、「私のビジョンやミッション、目標を、リスクを負ってでも支援してくれる人がいた」「競争心が強すぎるという批判を受けたことがある」などがあり、シリアル・アントレプレナーはこれら両方の項目に高い点数をつけていた。起業家マインドを持つ人々は、その強固なビジョンを製品・サービスに結びつけ、課題解決のためのソリューションとする。一般の人々がその課題の存在に気づいてさえいない時に、それを行うことも多い。

 起業家マインドを持つ人は、責任能力にも秀でている。調査では責任能力の定義を、「積極性、自信、再起力、そして自分の行動に責任を持とうとする意志を発揮すること」とした。責任能力の高い被験者は、「他の人には無理な状況でも結果を出せる人物という評価を受けていた」「自分の行動に責任を持つよう人に要求し、批判を受けたことがある」などの設問に高い点数をつけていた。この結果からもわかるように、責任能力の高い人は障壁をプロセスの一部と考え、諦めるのではなくそれを発奮材料とする。この結果から、自身の失敗を他に帰す人には責任能力が大幅に欠けており、起業活動で頓挫する可能性が非常に高いと推測できる。

目標達成への意欲も起業家マインドを持つ人の重要なスキルである。その定義は、「目標やミッションの達成に全力を注ぐこと」とした(これはリーダーシップと密接に関連する)。起業家の多くが、「私は大きな障壁を乗り越えて目標を達成できる人物として定評がある」「私の生産性が最も高まるのは、目標の達成に向けて周囲と密接に協力している時である」などの設問に同意を示した。製品やサービスは目標によって決まるため、自分の目標を強く意識することは重要だ。目標を設定し明確に発信することで、他者を巻き込み支持を得ることができる。

 最後は、対人能力である。これは他の4つのスキルを1つにまとめる機能を果たすものであり、効果的なコミュニケーション、親密な関係の構築、そしてあらゆる背景やコミュニケーション・スタイルを持つ人々とうまく付き合うことが含まれる。対人能力に優れた人は、「私が大きな成果を成し遂げたのは、人付き合いの能力に依るところが大きい」「取り乱した相手をうまくなだめる私の能力には定評がある」などの設問に同意を示した。対人能力に欠ける起業家は、自分とまったく同じコミュニケーション・スタイルを持つ相手としか関係を築けず、自分のビジョンや目標を伝える能力は制限される。

 起業の成功は、素晴らしいアイデアが完璧なタイミングをとらえることで実現する、という考え方がある。しかし我々の調査結果は対照的に、成功する起業家にはしかるべき理由があることを示している。彼らの多くが、特定のソフトスキルに秀でているのだ。なお、今回特定された5つの資質は先天的なものではない。これらの資質は――特に若い時期に――学習によって身につけ、伸ばすことができる。そして起業家としてのキャリア全体を通じて、さらに磨いていくことができるものなのだ。

HBR.ORG原文:New Research: The Skills That Make an Entrepreneur December 7, 2012  

 

ビル・J・ボンステッター(Bill J. Bonnstetter)
ターゲット・トレーニング・インターナショナル会長