ここで、不倫が問題となる。CWLPのデータをいくつか紹介しよう。調査に回答した女性管理職の34%は、上司との不倫を経験している同僚の女性を知っていると答えた(ディレクター以上の職位にある女性の15%は、自分自身にもそういう経験があると認めている)。回答者たちはさらに、こういった関係が見返りをもたらす場合もあることを認識していた。不倫経験のある同僚を知っていると答えた回答者のうち37%が、その同僚は不倫の結果として昇進を手にしたと答えた。

 人によってはそうした利点があるものの、不倫は職場に深刻なダメージをもたらすことも少なくない。たとえば、チームの士気は大きく低下する。CWLPのデータによれば、調査に回答した男性の61%、女性の70%が、不倫に及ぶ上司への尊敬を失っていた。そして最も悪しき影響を示すデータがある――男性管理職の60%、女性管理職の65%が、若い女性社員と上司の不倫関係を知った場合に、行為の見返りとして昇給や恵まれた任務が与えられているのではないかと疑いを持つと答えた。このような疑念は、職場の士気と生産性に大きな打撃を与えかねない。男性の48%、女性の56%は、不倫関係にある当事者2人に不快感を抱き、男性の39%、女性の37%が、チームがばらばらになって生産性が落ち込んだと答えている。巻き添え被害というわけだ。

 だとしたら、どうすればいいのだろう?

 企業はもっと積極的な行動をとるべきだ。たいていの企業は、社内での不倫に規制を設けようとはしない。CWLPの最近のデータによれば、回答者の70%が、自分の会社には合意に基づく社内不倫に関する規定がない、あるいは、何らかの方針があるかどうかもわからないと答えた。しかしいま、違反者に対して断固たる姿勢を示す時が来ている。

 法制度も、いくらか効果を発揮できるだろう。セクハラ訴訟の和解額に上限を設定し、根拠のない訴訟に対しては罰金を科すという方法もある。しかし、1人ひとりがなすべきことがある。経営幹部の男性、特に既婚者は、リーダーシップが責任と自制を伴うものであることを肝に銘じなくてはならない。部下の女性を口説くなど、論外だ。前途有望な女性管理職も、同じように自制心を持たなくてはならない。目先の利益に目がくらみそうになるかもしれないが、妻子ある上司との不倫は危険を伴う。傷つくのはあなただけではない。被害は広範囲に及ぶだろう。

 もはや当事者だけの問題ではない。視野を広げてみると、働く女性の前には、これからしばらくは暗い時代が待ち受けていることがわかる。早急にこの事態を打開しなくてはならない。


HBR.ORG原文:How Sex Hurts the Workplace, Especially Women August 24, 2010

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・ワークライフ・ポリシーの創設者、所長兼エコノミスト。