ヒューレットが運営するCWLPが行った調査によれば、職場での不倫は決して珍しいとはいえないことが明らかになった。その悪影響を被るのは当事者やチームのみならず、広く世間一般の優秀な女性管理職たちであるという。


 職場で男女が不適切な性的関係を持てば、傷つくのは当事者だけではない。ヒューレット・パッカード(HP)のCEOマーク・ハードは2010年8月、セクハラに関する社内調査の結果を受けて辞任した。このスキャンダルはハード自身のみならず、同社および株主たちにも被害を及ぼした。お相手の元契約社員、ジョディ・フィッシャーも犠牲者であろう。だが、発覚後のメディアの一斉報道ではほとんど言及されなかった、別の大勢の犠牲者がいる――優秀な女性管理職たちだ。

 女性のキャリアは、中間管理職の上位に達すると行き詰まる傾向にある。女性管理職が最高経営層へと上るためには、Cスイート(最高○○責任者)の男性による支援――「スポンサーシップ」が必要だ(以前の記事を参照)。残念なことだが、ハードがHPから追放されたことを受け、こうした支援はますます不足することになりそうだ。当事者であるハードとフィッシャーの言い分がどれほど食い違おうと、ニュースを読んだ男性幹部の大半は、こうつぶやくだけだろう。「女性の部下と2人っきりで食事をしてクビになるとは、気の毒な男だ。2人が本当に男女の関係だったかどうかなんて、誰にもわからないのに。恐ろしいことだ! 自分も、若い女性スタッフとはけっして2人っきりにならないようにしなくては」。ある経営幹部は私にそう語った。

 これでは、スポンサーシップが促進されない。潜在能力の高い女性の中間管理職が経営陣に注目され、やりがいのある任務を与えられ、やがて昇進するためには、上級幹部が労を惜しまず支援することが必要なのだ。スポンサーが弟子をとる――つまり、幹部候補者と真剣に関わる――のなら、相手をよく知る必要がある。その潜在能力を見極め、支援に値するか否かを判断するためには、かなりの時間を1対1で過ごさなくてはならない(2人で食事をすることだってあるはずだ)。

 センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)が2010年秋に行った調査によれば、最高経営陣のすぐ下にいる女性管理職にとって、スポンサーシップは昇進のドアを開く重要なカギであることが明らかとなっている。どんなに優秀であろうと、権力を握る幹部――たいていの場合、既婚男性――の後押しがなければ、中間管理職の上位にある女性はキャリアアップを見込めない。