前回に引き続き、社内不倫などのスキャンダルが女性管理職にもたらす弊害を追求する。あらぬ誤解を招くまいと、男性の上級幹部と女性の幹部候補、その両方が心理的にガードを高めてしまうことは、組織にとってマイナスに作用しかねない。


 2010年9月、ヒューレット・パッカード(HP)の元CEOマーク・ハードは、意気揚々とオラクルの共同社長に就任した。テニス仲間のオラクルCEO、ラリー・エリソンのおかげだ。元契約社員の女性との付き合いに関連する経費の不正使用を問われHPを追い出されてから、まだ1カ月しか経っていない。

 オラクルでは珍しいことではない、と思う人もいるかもしれない。ハードの前任者はチャールズ・フィリップス。2010年1月、愛人がニューヨークのタイムズ・スクエア、サンフランシスコ、アトランタの巨大広告看板でフィリップスとの関係を告白し、不倫関係のもつれが大々的に暴露された。1億ドルの3年契約にサインする代わりに、微々たる解雇手当で手を打ったマーク・ハードは、HPに手痛い目に遭わされたといえるかもしれない。しかしオラクルの社長就任で、その痛みもすっかり和らいだことだろう。

 シリコンバレーでは、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」が幅を利かせている。今回の出来事を通して、少なくとも男性は、キャリアが閉ざされそうになっても高い地位にある友人がドアを開けて助けに来てくれることを再認識しただろう。しかし、女性の耳に聞こえてくるのは同じドアが閉じようとする音だ。

 センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)の新たな調査によれば、男性の上司と部下の女性が不倫関係に陥った場合、女性の側が不相応に大きなダメージを受けることが明らかとなっている。女性の大半は、その後のキャリアに何らかの障害が発生すると考えている。女性回答者の70%は、社内恋愛が破綻すれば、部下の女性は上司の男性よりも厳しい制裁を受ける可能性が高いと考えていた。

 しかしキャリアに悪影響が及ぶのは、当事者だけではない。職場のほかの女性たちも傷つくことになる。なぜなら、スキャンダルを恐れることで、「スポンサーシップ」(上級幹部が幹部候補を支援すること)が促進されなくなるからだ。

 CWLPの調査によれば、最高経営層に至る手前でキャリアが停滞している女性管理職にとって、スポンサーシップは昇進へのドアを開けるきわめて重要なカギである。ところが、男性幹部の64%が、不適切な関係を疑われることを恐れ、部下の女性との1対1の接触を控えるようになっている。一方、若い女性の50%は同じ理由で、男性幹部と1対1で接することに二の足を踏む。

 こういった不安には、根拠がないわけではない。前回の記事で述べたように、上司と部下の不倫は、チームに大きな損害を与える。このテーマが微妙で厄介なのは、記事に対する反響の多さからも明らかで、ハフィントン・ポスト紙やJezebelのウェブサイトをもにぎわせた。