私のクライアントのリサは、直属の上司とうまくいっていなかった。上司のデイビッドの言葉は曖昧で、必要なコミュニケーションを十分に取れないのだ。そこで私とリサは、この状況を打開するため、毎日リサがデイビッドに投げかける質問のリストを作成した。たとえば、「今日、進捗を確認する必要のある人はいますか?」「お礼を言うべき相手はいますか?」「問い合わせの必要がある人はいますか?」といった具合だ。

 3週間これを続けてみると、デイビッドとのコミュニケーションはかなり改善された。そこでリサは質問をやめてみた。するとデイビッドは、数日で以前と同じ状態に戻ってしまった。質問は彼を変えたわけではなく、3週間のみ、その行動に影響を及ぼしていたにすぎなかったのだ。

 したがって、自分に問うべきはこうである――「最も優先すべきことを達成できるように、環境や生活を整えているだろうか?」

 私たちのほとんどが、「いいえ」と答えるだろう。誰もが1日の始まりには、優先事項を念頭に置いている。ところがeメールや電話に答え、質問をしたり指示を出したりしているうちに、その日何を最優先にしたかったのかを――たとえわかっていたにしても――忘れてしまう。ほとんど何も進んでいないのに、やたら忙しく追い回されるうちに日々が過ぎる。週末になれば、その週のはじめに何を目標としていたかもすっかり忘れてしまっている。年末には、最優先としていた課題に進展が見られず、焦る羽目になる。

 意志の力でもっと集中力を高めようとしても、効果はないだろう。自制心を持って自分をコントロールしてみたところで、長続きしない。私たちの環境には気を散らすものが多すぎる。周囲の人々からはたくさんのことをやるように期待される。自分にとって本当に大事なものや優先順位を反映した生活を、遠ざけてしまうような機会や誘惑も多すぎる。お菓子屋さんで暮らしながら、痩せようと試みるようなものだ。

 私たちは、環境を再構築しなくてはならない。胃を小さくしたり、台所から砂糖を追放したりするように。そうすれば、1番大事なことに集中できる可能性が高まる。そのためには3つの方法がある。

(1)優先事項を特定する(砂糖を追放する)

 今年、優先してやりたいことを5つ(それ以上は不要だ)、特定する。あなたの時間の95%を費やすべき事項だ。私が考案したTo Doリスト(PDFはこちら)には、「今年の優先事項#1~5」と「残りの5%」の合計6つの欄がある。5つのどれにも当てはまらないものがあなた自身のいまのTo Doリストにあれば、削除してしまおう。最後の欄は、砂糖のようなものだ。その年の優先事項に関係しない活動なら、時間の5%以上を費やすべきではない。

(2)行動を具体化する(胃を小さくする)

 毎朝、このTo Doリストを眺め、その日やるべき最も重要な項目をスケジュール表に落とし込む。そうすれば、最優先課題を限られた時間にどう割り当てるかを、戦略的に判断できる。

(3)公言する(何を食べるつもりかを、誰かに宣言する)

 上司でも同僚でも、パートナーでもいい。あなたのTo Doリストとその日の予定表を見せよう。あなたが何を達成しようとしているのか、今年の重点項目と予定表がどう合致しているのかを伝える。声に出して伝え、近くにいる誰かがそれを聞き、コメントを返してくれれば、自分の行動に対する責任が増え、いっそう忠実に行動するようになる。

 自分にとって大事なことに集中できるかどうかは、ジョーリーの減量と同じだ。それを支える環境をつくり上げた時に初めて可能になり、長期的に持続できるだろう。

※個人名と細部は変更している。


HBR.ORG原文:How to Stay Focused on the Important Things July 29, 2011

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。