問題はそれだけではない。チンギス・ハーンが埋葬された場所が、実際にはどのような外観なのかについての合意がなければ、たとえアルゴリズムがどれほど優れたものであろうと、リンのコンピュータは当て推量を行っているにすぎなくなる。可能性の高い場所を特定するためには、専門家の助けを借りる必要があった。

 暗礁に乗り上げたリンは、発想を切り換える。彼はコンピュータ・サイエンティストとして、オープンソース・コミュニティの威力を知っていた。技術的支援を要するありふれた問題の解決だけでなく、クラウドで達成されていく小さなタスクを組み合わせ、複雑なソフトウェア・システムをつくり上げた経験を持っていたのだ。

 リンは考えた。すべての画像データを1平方キロメートルずつ確認し、それらを分類すると同時に、注目すべき古代遺跡があれば印をつけておく――この作業にクラウドを活用できれば、埋葬場所に正確に狙いを定めることができるかもしれない。分類と特定を手伝う1人の専門家を確保する代わりに、クラウドの作業を集約し、個々の参加者のデータが重複する地域を精査すれば、正確な評価につながるだろう。こうして、すべての画像を分類する作業、および古代遺跡を特定する作業の両方をコスト効率よく配分するために、クラウドが活用された。

 リンはナショナル・ジオグラフィック協会と協力して、モンゴルをマッピングするイニシアチブを立ち上げた。参加者は、6000平方キロメートルをカバーする8万4183の高解像度画像タイルから1枚を与えられ、「道路」、「川」、「現代建築」、「古代建築」、「その他」のどれかに分類する。分類が終わると、他の参加者が行った分類を見ることによって、自分の持つ墓のイメージを修正し、次に割り当てられる画像タイルの分類に活かすことができる。

 このイニシアチブは、2010年6月に立ち上げられ、半年で1万人以上の参加者が230万以上の画像タグを作成した。タグが集中している地域を観察する時には、リンは無作為に選ばれた何百人もの参加者が同じ分類を行った箇所を対象とした。このようにして、彼の言葉を借りれば、大規模に「人間の認識をプールする」ことが可能になったのである。プロジェクトは現在も進行中であり、2万8000人以上の参加者が画像データ分析に貢献している。

 リンのチームはその後、これらの画像を用いて、墓所の可能性のある古代の建物100カ所を特定した。そして、インディ・ジョーンズならきっとそうしたように、現地に飛び、起伏に富む地形を間近で観察するため、自分の足や馬で探索を行っている。中でも55カ所は、考古学的にも文化的にも重要で、青銅器時代の円墳、鹿石の巨石、古代都市の要塞などが含まれていた。チームは現在、そのいずれかがチンギス・ハーンの墓所である可能性を追求するため、現地で本格的な考古学調査を行っている。予備調査によれば、期待が持てそうだ。


HBR.ORG原文:How the Crowd Is Solving an 800-Year-Old Mystery April 17, 2013