瞑想は、この非生産的なことをやろうとする衝動に抗うことを教えてくれる。

 私がよく述べているように、意志の力に頼るよりも、目的の達成を支える環境をつくってしまうほうが簡単で確実だ(前回の記事を参照)。しかし同時に、地味で時代遅れの「自制心」に頼るべき時もある。

 たとえば、部下が失敗すれば、怒鳴りつけたくなるだろう。いくつか質問をし、穏やかに理性的に議論したほうが、その部下にとっても職場にとっても好ましいとわかっていてもだ。会議では、黙って聞いていたほうがいいと思いながらも、何かを口走りたくなることがあるだろう。株の売買では、ファンダメンタルズや自分で調べた結果をもとに考えれば別の選択が好ましいとわかっていても、感情にまかせて行動してしまうことがある。目の前のタスクに集中すべきなのに、3分ごとにeメールをチェックしたくなる時もある。

 毎日の瞑想は、あなたの意志の力を強化するだろう。衝動は消え失せはしないが、うまく対処できるようになる。そして、衝動は単なる誘いにすぎないと体感する時が来るはずだ。この時、あなたは自制心を発揮しているのだ。

 そうなれば、もはや衝動に負けないのだろうか? いや、もちろんそんなことはない。衝動は有益な情報を持っている。おなかが空いているなら、食べる必要があるという合図だろう。しかしそれは、退屈しているか厄介な仕事に四苦八苦していることを示すものかもしれない。瞑想によって衝動をコントロールする訓練ができる。そして、どの衝動に従い、どの衝動をやり過ごすかを意図的に選択できるようになる。

 さて、どうやって瞑想すればいいのだろう? あなたが初心者なら、基本を押さえるだけでよい。

 椅子でも、床のクッションの上でもいい。楽に呼吸できるように、背筋を伸ばして座ろう。そして、何分でもいいので瞑想したいだけタイマーをセットする。タイマーを押したら、目を閉じてリラックスし、タイマーが鳴るまでは呼吸だけを行う。息を吸って、吐く――これを繰り返す。雑念や衝動が現れたら、それらの存在を意識し、その意識を呼吸に戻す。

 それだけだ。シンプルだが、簡単ではない。まずは今日、5分間やってみよう。そして明日も同じだけやってみてほしい。

 今朝、瞑想を終えると、私は書斎で執筆を始めた。数分後、7歳の娘ソフィアがやってきて、台所が洪水だと言う。5歳の息子ダニエルがコップに水を注いだあと、蛇口を戻さなかったらしい。なんてこった。

 一瞬、2人に向かって叫びたくなった。しかし瞑想の訓練がその衝動を抑えてくれた。私は深呼吸した。

 そして子どもたちとともに復旧活動を開始した。家中のタオルを集め、毛布まで使って、水を吸い取った――笑いながら。拭き終わると、この出来事について語り合った。そして3人で下の階の住人を訪ね、洪水のことを詫び、手伝えることはないかと尋ねた。

 この出来事のおかげで、執筆時間が1時間無駄になった。締切に間に合わせるつもりなら、いつものペースではダメだ。私は軽く食事をとった後、2時間の間、気を散らせるもの――eメール、電話、Youtubeの楽しい映像――をすべてシャットアウトして全力投球した。結果的に30分で完成させることができた。

 瞑想が時間の無駄だなんて、決めつけるべきではない。


HBR.ORG原文:If You're Too Busy to Meditate, Read This October 12, 2012

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。