たとえば、優れたサービスを基盤として勝とうとしている企業があるとする。その企業は、消費者が優れたサービスにお金を払うことに賭けなければならず、また自社が競合よりもよいサービスを提供できることに賭けなければならない。この戦略と賭けの内容を明確に打ち出すことで、同社はそれらの結果を測定するシステムを開発することができる。

 そのシステムは結果を左右する重要事項、注意を払うべき事項をはっきりと示すものでなければならない。そうしたシステムがなければ、事態が進展した時に、何が重要なのかがわからず、起こっている状況を理解する方法もわからない。つまり、戦略を打ち出すことにより、市場のフィードバックからノイズを取り除き、情報を読み取れる割合が高まるのである。

 このように、戦略は不確実性を取り除くものではなく、世界が賭けと反対の方向に動き始めた時に気づくためのものなのだ。たとえば、顧客は小さなスクリーンが欲しいのだろうと自分たちは考えていたが、実際は大きいものを欲しがっている、というような場合だ。戦略についてこのように考えると、次の2つの点で役に立つ。

 第1に、企業は主要な賭けを厳重に見守り、逸脱し始めたらいち早く気づき、適切な措置を取ることができる。何を注視すべきかがわかっていなければ、企業の対応はずっと遅くなる。

 第2に、素早く戦略の修正に踏み出せる。戦略の論理的な構造がわかっているので、そこに新たなデータを適用し、戦略のロジックをアップデートしたり強化したりできる。このほうが、新たに考え直すよりずっと効率的だ。

したがって、戦略は不確実性を取り除くものではなく、人生において避けられない不確実性に生産的に対処する方法だと考えよう。将来について継続的に賭けをしながら、またそれを修正しながら不確実性に向き合うのである。


HBR.ORG原文:Placing Strategic Bets in the Face of Uncertainty January 22, 2013

 

ロジャー L. マーティン(Roger Martin)
トロント大学 ロットマン・スクール・オブ・マネジメント
学長。
著書に『インテグレ―ティブ・シンキング』などがある。