●まず事業上のニーズを考え、次にインフラを築く
この点は直感的に理解できそうに思えるが、企業はまずデータのインフラを築き、その後でデータをどう扱うか考えるという誤りを犯しがちだ。シーザーズ・エンタテインメントでCMOを務めたデイビッド・ノートンは次のように言う。「最初に事業上の問題を理解してから、データのインフラを整えるべきだ。たとえば、データをどのスパンで見るか――1時間ごと、1日ごと、1週間ごと――を決めるといった単純なことが、データの整理の仕方に影響する」。CMOがCIOと共に顧客理解に必要なデータの概要を示せば、CIOはデータのインフラを事業上のニーズに合わせることができる。
●顧客を包括的に理解する
データはさまざまな場所で生じる。ポイントカード、購入、ソーシャル・メディア上の行動、ウェブサイト分析、アンケートなどである。これらの相互に異質な顧客関連の情報は、新たな技術で統合することができる。しかし、多くの企業にとって、これが障壁となる。コンサルティングおよびファクトベースのリサーチを行うオプティマル・ストラテジックスのCEO、R・スクマー博士も同意見だ。「顧客データを統合して優れた洞察を引き出すうえで我々のクライアントの多くが抱える問題は、社内にその能力がない、あるいは余力がないことである。しかし、顧客理解において競合の先を行くためには、この統合的な視点こそがまさに必要なものである」
また、顧客に関して統合的な視点を手にしたとしても、それに基づいて迅速に行動するスタッフや余力がない場合も多い。だからこそ、企業は外部のパートナーに依頼してこのギャップを埋め、データを統合・分析し、そこから得た洞察を事業上の結果に結びつけられるよう力を貸してもらうのである。こうした外部のパートナーとなるのは、詳細な顧客データを生み出し活用するのに必要な技術を持っている企業である。
●誰もが使えるツールを用いる
これまで、データ分析と顧客調査は、技術的に複雑なシステムを操作できる数人の従業員(通常はマーケティング・リサーチ部門)だけが担当するものだった。しかし現在は、マーケティング部門のさまざまな人が、たとえ技術に不慣れであっても、顧客調査を自分で分析できるようなレポーティング・ポータルが出てきている。たとえば、前出のスクマー博士が運営するオプティマル・ストラテジックスも、そうした万人向けのツールを開発している企業の1つである。スクマー博士によると、「これまでは、マーケティング・リサーチャーやコンサルタントが作成したパワーポイントの資料から、マーケターが情報を引き出さなければならなかったが、そうした時代は終わった」という。いまやCMOは、通常はCIOのチームが扱うような情報を、みずから活用できるようになっている。
CMOとCIOが協力すれば、事業における競争優位につながる。技術を用いることで、手元にある大量の情報が理解できるようになる。また、その結果を解釈して、顧客が何を望んでいるか、よりよい気づきを得ることができる。CMOとCIOが顧客へのフォーカスを共有することで、事業の成長を促す力は強大なものとなるのである。
HBR.ORG原文:How CMOs Can Work with CIOs to Gain Customer Insight November 9, 2012

キンバリー・A・ウィトラー(Kimberly A. Whitler)
インディアナ大学講師。研究分野はCMOの役割と貢献。フォーブス誌の寄稿者でもある。