本誌2013年10月号(9月10日発売)の特集は「顧客を読むマーケティング」。これに合わせ、HBR.ORGから関連記事10編をお届けする。第4回は、CMOとCIOの連携によって有益な顧客インサイトを得るための、4つの要諦を紹介する。
顧客に関してより深い洞察が得られれば、企業は大きく成長できる。少なくとも、最近IBMが1700人のCEOに対して行った調査では、そうした結果が出ている。しかし今日では、顧客データを取得し解釈するには、マーケティング部門とIT部門の両方が関わる必要がある。事実、CMOカウンシルが最近行った調査は、このプロセスは最高マーケティング責任者(CMO)と最高情報責任者(CIO)の主導で始まるべきであることを示唆している。
CMOが直面する問題の1つが、どのようにして社内の他の部門と組むかを見極めることだ(デイビッド・アーカーの記事「縦割り組織の壁を破り、ブランドを築く――CMOがやるべきこと」を参照)。今日のCMOは顧客と企業を結ぶうえで中心的な役割を果たしているが、CIOと強力な関係を築けば、顧客を理解する際にITを活用できることになる。
顧客関連の情報をもたらす分析ツールは多数存在するものの、CMOはデータを変換して、実際に活用できる顧客インサイトに変えるのに苦労している。IBMの研究では、CMOの70%以上がデータの急増に対応できる状態になく、「真の洞察を得ていない」と感じていることが示されている。
いまこそCMOとCIOが協力し、手近な技術を用いてこのプロセスを容易にする方法を見極めるべき時である。それが究極的には事業全体の成長を促す。以下に、CMOとCIOが強力なパートナーとなるための、4つの提案を示す。
●共通認識を見出す
マーケティングとITのあいだに有効な関係を築くうえで、最大の障害となるのがインセンティブの相違である。CVSとデイビッズ・ブライダル(David's Bridal)でCFOを務めたジーン・モーフィスは、次のように述べる。「CMOとCIOが接すると、リスク・マネジメントとイノベーションが交差するという興味深い状況が現れる」。この交差は、変革やイノベーションや売上成長の促進を担う者(マーケティング)と、技術や情報やシステムに問題がないようリスクを管理する者(IT)とのあいだに生じる、根本的なものだ。イノベーションとリスク・マネジメントの両方に関して、マーケティングとITが同じ認識を持つようにするのは、CEOの役割である。
この種の不調和を克服する最良の方法は、まず双方の部門で異なっているインセンティブ構造を理解し合い――そして尊重し合い――、落とし所を見出せるよう協力することだ。ときには、CEOが計画の調整に当たる必要が生じるかもしれないが、CMOとCIOが共同で提案を行ったほうが成功の可能性は高くなる。