在宅勤務の是非は、依然として定まっていない感がある。しかしCWLPの調査で明らかとなったのは、Y世代(1970年代後半~1990年代前半生まれ)の多くが、より柔軟な働き方を望んでいるということだ。このトレンドは世界的で不可避であると、ヒューレットは示唆する。
今日の職場にふさわしいテーマ曲を挙げるならば、イギリスの2人組ザ・ティン・ティンズが歌う『ハンズ』が有力候補だろう。「働きすぎなら手を叩こう」という歌詞が繰り返されるからだ。長時間労働と業績向上をますます強いられる今日の職場環境は、かつてないほど厳しいものとなっている。米国労働者の週当たりの労働時間は増加する一方だ。その結果、職場にあふれる7000万人のY世代の間では苛立ちが高まっている。
Y世代(1970年代後半~1990年代前半に生まれた人々。ミレニアル世代ともいう)は、自分たちの親であるベビーブーマー世代の「仕事だけが人生」という生き方とは異なるものを求めていて、そのことを自覚している。Y世代のライター、コートニー・マーティンは『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙の論説で次のように述べている。「私たちは、両親が殺風景なオフィスで人生を無為に過ごし、定年まであと何日、と指折り数える姿を見てきた。理想主義だと言われるかもしれないが、仕事は人生の一部でしかないはずだ。毎日夜8時にタイムカードを押し退出してから、ようやく『本当の生活』が始まる――そんな考えを受け入れなくてはならないのだろうか?」
センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)による「ブックエンド世代」(ベビーブーマー世代とY世代を合わせた呼称)と題した研究によれば、Y世代は報酬を多様なかたちで求める。名誉ある肩書き、権威ある地位、それらに伴う報酬といった伝統的な見返りでは満足しない。挑戦しがいのあるさまざまな仕事をする機会、刺激的な同僚、コミュニティとしてうまく設計された職場環境、柔軟な働き方、などを重んじる。Y世代の89%は、働き方に関する柔軟な選択肢は雇用主を決めるうえで重要な要素だと答えている。The Trophy Kids Grow Up(未訳)の著者ロン・アルソップは、「ミレニアル世代は、ワーク・ライフ・バランスを当然の権利だと考えている」と述べている。彼らはワーク・ライフ・バランスを実現するために「変革の推進者となり、フレキシビリティを職場の最重要課題として掲げている」という。
Y世代についての別の研究によれば、彼らは働く時間帯を自由に選べるのであれば、長時間労働も厭わないという。ある女性回答者はこう言い放った。「この部署で最高の業績を上げている私が、4分ばかり遅刻したところで、とやかく言われる理由はないでしょう」
Y世代のこの傾向は世界的なものであり、企業側は順応しなくてはならない。シスコでアジア太平洋地域のダイバーシティとインクルージョン(多様な人材の採用と活用)を推進するシニア・マネジャーはこう説明する。「当社の新規雇用者の3分の1は、インドと中国の出身です」。直接の対面を重視する文化で育ってきたにもかかわらず、Y世代の彼らは「1日8時間、10時間、12時間もオフィスに縛られる働き方ではなく、自身の自然なリズムに基づいた、従来とはまったく異なる新たな働き方を求めています」